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5 人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
神殿から始まるアンデス文明の不思議,
By asroc-mu (滋賀県) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 古代アンデス 神殿から始まる文明 (朝日選書) (単行本(ソフトカバー))
予想以上に専門的な内容で読み進めるためには頭を働かせる必要があったが、もともと興味のある分野なので久しぶりに考古学の世界に浸れて楽しかった。
序章では石器時代からインカ帝国に至る数千年にわたるアンデス文明の歴史を概説、第1章以降で、50年にわたる東大アンデス調査団の活動、個別の遺跡発掘の詳細なレポートなどが書かれている。 アンデス文明に興味を持つことになったのが、1958年の第1回調査団を率いた泉靖一氏の著作を読んだことがきっかけだったので、この部分の記述には特に熱中した。 この調査では、社会が未発達で土器すらない年代の地層から次々に神殿が発見されたが、それは従来の考古学の常識を覆すことになったという。 メソポタミアにせよ中国にせよ、文明というのは農業が発達してから、権力が生まれ、都市や神殿が築かれて、という順番が常識だが、アンデスの場合、いきなり神殿が築かれ、それを中心とした社会が生まれ、農業が発達したのだという。 また、古い神殿が埋められ、その上に新しい神殿が築かれるという「神殿の更新」が行われていたことが明らかになり、その理由は複雑なようだ。 もし「権力交代のアピール」が理由なら、日本で秀吉の築いた大坂城が徳川幕府により埋められ、その上に現在の大坂城が築かれた例があるが、4000年前の南米アンデスで似たようなことが行われていたのなら面白い。 後半に収録された、調査団50年を記念して催されたシンポジウムも興味深いものだった。 調査団のメンバーを中心に、ギリシア・ローマ考古学者の青柳正規や、ナスカの地上絵の研究を続けるタレントの楠田枝里子を交えての討論は、メソポタミアやギリシア・ローマなど他の文明との比較や、専門家以外の視点が良い刺激になっていた。それにしても、楠田枝里子が考古学ファンとは知らなかった。 丹念に根気強く地層をはがしていき、遺構や遺物が見つかったときの興奮や、断片的な物証からストーリーを組み立て、それを崩す発見があれば組み立て直し、という作業など、考古学の醍醐味について、現役の考古学者自ら熱く語っていた。 しかし読めば読むほど、あらゆる意味で「これはとても自分の能力・適性では不可能だ」と感じることが多かった。一時は本気で考古学者になろうと志望校まで検討したが、何と無謀だったことか。
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