幼いころに絵本で読んだトロイ戦争の物語に感銘を受け、世間の常識と通説に抗し、トロイは実在すると本気で信じたシュリーマン。本書は、苦境に屈することなく学問に励み、経済的成功を収め、それをもとについにはトロイの遺跡の発掘に成功したシュリーマンの自伝である。
真の意味で「自伝」と呼べるのは「一.少年時代と商人時代」のみであり、残りの各章はシュリーマンの死後、残された妻ソフィアが、シュリーマンと親交のあった研究者らの助力を得て、シュリーマンの諸著作をベースにトロイやミケーネの遺跡発掘の過程やエピソードを描写するものとなっている。第一章におけるシュリーマンの苦難をものともしない情熱や、ギリシア語、ラテン語、ロシア語など極めて多数の言語を次々と習得していった努力と学習方法には、読んでいて触発させられる。一部に事実でない事柄が盛り込まれている点をもって本書を痛烈に批判しているレビューが見られるが、学術研究ならともかく、自伝とはえてしてそういうものであり、その点をもって本書を全否定するのはもったいないだろう。夢や目標に向かう中で時に壁にぶつかったとき、本書は壁を乗り越えるためのエネルギーを与えてくれる一冊になるだろう。