わが国における不世出の独創的学者・思想家の一人である折口信夫の学問と思想への入門書。青少年向けの新書ということで叙述は平易だが、内容は濃い。読者は本書を通じ、神観念の原型として文学や芸能、宗教の発祥点とされる有名な「まれびと」概念や(譬えは良くないが)いわば暗黒物質のように神々の世界を満たす霊性としての「ムスビ」概念など、彼の知的営為におけるキー・ワードについて一定の理解を得ることができる。(含羞に満ちた彼の姿をとらえた数多くのショットをはじめとする豊富な写真も、理解を助ける。)但し、本書で語られるのはあくまでも彼の学問や思想面に限定されており、藤井春洋との関係など、彼の学問や思想と不即不離の関係にあるはずの人間的側面についての叙述は省略されている。この点に関心のある読者は、別書にあたった方がよい。