子別れ(通し):ニッポン放送『演芸くらぶ特集』昭和36年2月15日放送(47分47秒)。
名工矩随:ニッポン放送『志ん生十八番』昭和31年4月16日放送(24分50秒)。
『子別れ』は、前半『こわめしの女買い』後半『子は鎹(かすがい)』を独立して演じられることもある長編作品。私事ではありますが幼き時分にラジオで聞いており、おそらく『子は鎹』部だけ、今回あらためて聞いてみてもやはり素晴らしく、ホロリとしてしまいます。
酒に酔った勢いで吉原にくり出す、それが前半部の滑稽なやり取りではあるが笑わせるためではなくプロローグとしての役割を担っており、後半の夫婦の別離を絶対的な転換にするために置かれているようなものです。したがって前半だけでは緩慢さは否めません。酔っぱらいが馬鹿な真似をすること自体は滑稽ではなく当然の行動であり、また後の受難が重くのしかかっており笑いに必須の慰安がないのです。ただ導入部分ゆえに必要であるのですが笑いも取らずもう少しサラリと流してくれた方が聞きやすく思えないでもありません。
そうこうして離別の段になると、前半とは打って変わって重量のある物語となって終幕へ急回転していくわけで、親子三人の役割がいっそう重要になり誰を抜いても進展しない完璧な調和を生みだしている。
「ぬか床に漬け物があるからね」と今まさに夫と別れんとするおかみさんの最後の言葉が身にしみます。
『名工矩随』も家族を題材にした些か鬱蒼とした演目で、昔話のおば捨山を連想させます。