戦後、ましてオイルショック後世代の僕らにあっては
「天の岩戸」「ヤマタノオロチ」「因幡の白兎」等の説話を断片的に
知っているのみ、というのが大方のところである。
では真面目にこの「ふることぶみ」に触れてみようと思っても、
古語で編まれたその原文の表現や神々の名前はあまりに難解、
読めたとしても前提知識なしに正しく意味まで理解できるものではない。
当然注釈、願わくば現代語訳が欲しいと思うわけだが、この講談社学術文庫版の古事記は
その要請に応えてくれる一冊である。
1.原文は書き下し文に書き改め、
2.適宜章段に区切り、
3.章ごとに注釈をつけ
4.現代文の訳を付加する
といった編集方法となっているので、日本神話に対する前提知識がなくとも、ここから入って行ける。
現代語訳をただ読み飛ばすだけでも面白いが、注釈を丹念に追って行けば、
一見荒唐無稽に見える説話でも、その成立の背景が見えてくる。
民俗学の本などと併せて読むには持って来いの一冊で、
古事記に対する理解を深める入り口としては最適と言えるだろう。
この書を読む上で重要なことは、その説話の内容はもとより、
その成立の背景や、それらが大和朝廷により取捨選択され、
「古事記」として編纂されてきた理由なのだと思う。
上巻では、イザナギ・イザナミによる国生みから、いわゆる海幸山幸の説話までを収録。