有名な昔話の原型がたくさん出てきますが、共通しているのは兄弟・親子で戦い、きれいな娘を奪い合い、うまいものを食べて歌を作るという点。神様たちの乱暴ぶりに驚かされながらも、日本の基礎はこうして造られたのかと、自分の中の日本人を振り返る気持ちにさせられます。
西日本の地名の由来や、なまこの口はなぜ裂けているか、なんてことも書かれていて(アメノウズメに逆らったので、刀で切られた)、とても面白い。イザナギ・イザナミ夫婦にも「見てはならぬ」の禁止譚が出てくるし、黄泉比良坂(よもつひらさか)、つまり黄泉の国とこの世の境という言葉は、古事記由来だったとは……。
八世紀に漢語で書かれた原本を、福永武彦氏が現代の子ども用に訳したもの。原文の「文学的な、詩的な調子」は伝えられたはずと、氏があとがきで自負しているように、読みやすく美しい日本語は大人にもお薦めです。