いわゆるレイライン的な視点で、古事記や古代史の謎を追っている本。豊富な図版と地図が実にわかりやすいです。
読書中、膝を何度もたたかされるくらいに新しい知見にみちていました。古代歴史のミステリー好きにはたまららない一冊となるでしょう。
武澤秀一(やはり建築家)の著作では、三内丸山遺跡の「夏至の日の出〜冬至の日の入り」というラインに敷かれた石の意味が書かれていた。本書ではその縄文時代よりだいぶあと、古代国家が建設され始めてきている時代の話でおそらくあろうが、古代人にとって、太陽の運行と方位が重要な霊威として特別視されてきていたのは、想像に難くない。
これまで多くの歴史書・フォークロア本を読んできたつもりですが、伊勢(二見浦、朝熊ヶ岳を含む)のパワースポットとしての特権的な位置づけには、なぜという思いがあった。が、本書での「聖軸説」で初めて腑に落ちた気さえします。
そして本書では多くのレイライン仮説が提示されている。学界で定説のまるでないところにズバリと切り込んで答えを出している箇所も多く、かなり興奮します。意外に思ったのは、古代史や古事記における足摺岬(サダ岬、猿田彦)と笠沙岬(コノハナサクヤ、阿多)の重要性。地名と神話という「点と線」を見事なまでにつないでいるため、当地の教育委員会や識者にはぜひ一読をおすすめしたたうえで、すぐにも検証すべきほどのレベルでしょう!
大きな風呂敷ではあるのですべてに納得されるわけでは無論ない。例えば、検証の点で甘いところも見受けられます。著者が言う聖軸や東西線に並ぶ寺社や遺跡のなかで、時系列的(通時的)な関連性や共通性の「因子」をより多くもし見出すことができるならば、それは「論証」したことになります。各話題が多いため仕方ないともいえるが、要するに全般的にはフィールドワーク不足かなとも思われます。そのあたりは著者が建築家・建築士だからということなのかもしれないが、もし谷川健一や前田速夫ならばより純粋ド文系的なアプローチをして証拠固めありの好読み物としたであろう。そのため、文系のすぐれた「読み物」としての快楽度が薄いが、原情報が満載された新仮説資料としての意義が多大にある書ではないか、と思われます。多くの古代史論争にピリオドを打ちたい! という意気込みはよく伝わります。
武澤氏などとともに在野学会の一つも立ち上げていいんじゃないかと思う。