神話に興味を持つもので、北欧神話を知らない人はいない。また北欧神話を知りたいと思うものは、だれでもサガ・エッダを読む。
しかし、そのサガ・エッダを原文(古アイスランド語)で読む人は極めて少ない。なぜなら、その文法を学ぼうとすれば、英語やドイツ語で書かれた文法書・入門書を読まなくてはならず、またその多くは300頁を超える大部なもので、通読すら難しいものだからである。
本書『古アイスランド語入門』は、これらの問題を一挙に解決してくれる待望の書といえる。
その特徴は:
0.(当然ながら)日本語で書かれている。
1.170頁とコンパクトである。
2.簡単な文法(46頁)を終れば、テキストがすぐ読める。
3.テキストには親切な注がつき、また語彙(辞書)も充実している。
本書に収められたテキストは、散文では「主の祈り(マタイ6:9)」「赤毛のエリクのサガ」など9編。エッダからは「巫女の予言」全文など3篇である。
なお、ゲルマン比較言語学・印欧比較言語学に興味を持つ読者には、別の利点もある。それは、巻末の「語彙」のどこか1頁を見ればすぐ分かる。古アイスランド語の単語に対して、語源的に関連のあるラテン語・ギリシャ語をはじめ、多くの言語などが挙げられているのである。その中には、古アイスランド語kjosa(選ぶ)に対してドイツ語Kurfurstが何の注釈もなく挙げられている例もある。しかし、これが逆にゲルマン諸語の歴史を遡って研究する糸口ともなるのである。