ダイソンの和書のなかでは最新刊のはずで、書評中心であるが相変わらず挿入されるエピソードが珠玉。
ブラックホール解を発見したオッペンハイマーに、なぜその後関心を失ったのかを訊ねる著者。
具体的な解など瑣末なもので、究極の物理基本方程式の探求こそが本懐であるとの回答。還元主義の呪縛であったと著者所感。
老人が革新者であり続けたがゆえに(アインシュタイン・ディラック・ハイゼンベルク・ボルン・シュレディンガー)、
むしろ保守派になった若い頃の著者たちの世代(ファインマンでさえ、その科学的本質は保守的であったとのこと)。
量子電気力学の現代理論を纏め上げた著者が、その25年前に当該理論を創始したディラックに、嬉しいかを尋ねたときの回答。
「あの新しい着想は正しいと思ったかもしれないね、あれほど醜くなかったら。」・・・それで会話は途切れた。
パルサーが中性子星であるのを示したことで有名なトマス・ゴールド。知らなかったが、実に様々な分野で活躍したようだ。
著者は、青年期にゴールドの聴覚メカニズム研究において実験台となったこともあるそうだ。
ゴールドはほかに、石油非生物由来説や地底高熱生物圏説など、人々を驚かせる数多くの仮説を打ち立てたとのこと。
ドイツが核兵器を作り得ない状況が明らかになったとき、ロスアラモスから唯ひとり途中離脱したジョゼフ・ロートブラッド。
その後の核兵器廃絶運動への献身に対して、ノーベル平和賞を贈っていないのは恥ずべきことだと著者が講演で話していた時。
聴衆の一人が「知らなかったんですか、彼は今朝受賞しましたよ。」著者が「万歳」と叫ぶと、講堂全体が喝采の嵐に包まれた。