ソルジェニーツインは「イワン・デニーソヴィチの一日」や「煉獄のなかで」「ガン病棟」など小説作品が有名だが、文学的ノンフィクションとも言える「収容所群島」こそ彼のエッセンス(精粋)であり、ライフワークなのだろう。第一巻ではまだ収容所群島の具体的描写は殆ど出てこない。しかしソ連共産主義がイデオロギーの名の下に人民を徹底的に虐げ、抑圧したその実相の基底が第一巻に記されている。第2巻とも重なるが、戦争捕虜になった自国民を片端から逮捕し、スパイ、反逆等の汚名を着せて収容所送りにするなど信じがたいものがある。また数合わせで無実の人間をでっち上げ逮捕するなども恐ろしい話である。素朴・土俗といったイメージの強いロシア人ながら、圧政、抑圧、国家テロのテクニックには驚くべき能力が発揮されたようだ。先頃成立した我が新政権にはこんな根性はないだろうが、けっして過去の出来事として葬り去ることはできない歴史ホラーとも言えよう。