この巻では黒烏州が舞台なので皇都組は出番が無く少しションボリ。でも、女装が趣味の万能使用人・ルアンとか、あくまで執事な○執事とは違った雰囲気の有能執事・陸志雄、張宝の弟で凄腕の暗殺者・張梁、そして蒼刻の兄で鬼畜&外道な最強の武人・戴青等、またまた新キャラ達が話を盛り上げてくれるので、とても面白く読む事が出来て満足です。
まずは州都・龍珠へ向かう道中で蒼刻の弟からの、読んでいてとても楽しくも刺激的な文が届いたところから始まります。今回蒼刻は消息不明な兄の探索と、黄巾賊の関与が濃厚な密輸疑惑の調査がお仕事となります。戦の準備の一つとして黄巾賊の資金源を断つためです。朧月の兄であり黒烏州刺史・静心の協力を得て早速捜査開始。元々静心が網を張っていたお蔭もあってすぐに進展を見せるも、有力情報を寄せてくれた大商人の家に詳細を聞くため訪れた先で、その商人の暗殺未遂事件が発生。そこで張梁と初めて対峙しますが、張梁は玄人故の判断であっさりと退却しちゃいます。難は逃れたものの暗殺未遂事件が起きた背景、毒殺に見せかけた暗殺方法は呪詛なのではないか。と、どんどん事件はきな臭くなって行きます。事件全体像は正直とても凄惨で陰鬱です。その中で星彩の過去がほんの少し語られたり、朧月と蒼刻の心の触れ合いがあったりしながら、戴青のハチャメチャ且つ強力な助力を得て、後味の悪さを残しながら事件は何とか無事解決します。
読み終わって思ったのは、事件の捜査云々よりも二人の気持ちの擦れ違いと絡みがメインなのかなぁ、と。実際には二人の関係自体はちっとも進んでいません。せいぜい手を繋いだり抱擁したり、な程度。しかし心の内で進展が見られます。蒼刻はちゃんと異性として朧月と対し、さりげなさを装ってはイチャイチャしようと試みます。尤もルアンに邪魔されたり、静心に殺されそうになって、ピンクな雰囲気は長続きしませんが。一方朧月は「私が手の掛かる珍獣なら、蒼刻さんは飼い主様。年頃の女の子として優しくしてくれている訳じゃない」と敢えて逃避していたのですが、戴青に「あんたは蒼刻のことが好きか、嫌いか」と率直に聞かれて惑います。自分の中にその答えはあるのに、引け目や遠慮、恐れが葛藤となって心に無理矢理蓋をしてしまうのです。この蓋をいかにして開けるのか?蒼刻にとって、本当の恋人同士になるための課題ですね。