むかし、友川氏は「ユートピア」の本来の意味「どこにもない場所」を知り、大嫌いだったはずのその言葉が急に好きになったという。
個人的には「フォーク」も「東北」もどうでもいい括りだと思っているが、友川カズキ、となると話は別だ。
こんな歌手(とうか存在)、どこにもいないだろう。
装丁が思いの外豪華で、特典DVDのケースも紙ジャケで出来ており、手にした時の感触が凄く良い。
この手のCD・DVD付き書籍のパッケージとしては、最高レベルのものだと思う。
書籍自体にも随所に色々な仕掛けが施してある。
ファンの間では殆ど伝説と化した「あの曲」の直筆歌詞も掲載されている。
本文に使用されている紙質も素晴らしい。
音楽本には得てしてデザインが残念なことになっていたりするケースが多い(特に懐古系)ので、ある意味想像だにしないカッコ良さだった。
歌詞の構成も、編年体ではなくあくまで「現在」を起点にセレクトされている感じがした。
セレクトに関しては、好みは人それぞれだろうが、「セメント」を初め、今はアクセス不可能な作品も掲載されているのは昔からファンにとっても嬉しいだろう。
冒頭に「あの曲」を持ってきて、最後に最新曲の「先行一車」を掲載した辺りが分かりやすいと言えば分かりやすいが、まぁ、確かにこうならざるを得ないだろうな、とも思う。
外からも中からも友川カズキという歌手の「匂い」がぷんぷん充満している。
これ見よがしな「東北怨念」や「70年代フォーク」といった括りを回避し、現在進行形の存在としての友川カズキが本の中に息づいている。酒を酌み、ギターをかき鳴らし、咆哮している。
昨今、ドキュメンタリー映画の公開を機に友川氏の周辺が俄然騒がしくなり始めたようだ。
皆気づくのが遅すぎた、とうそぶきたくもなるが、正直ファンとしては嬉しくなくもない。
有体に言えば、若いリスナーこそ手に取るべき一冊だろう。