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原稿零枚日記 [単行本]

小川 洋子
5つ星のうち 4.5  レビューをすべて見る (11件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容紹介

ある作家の奇妙でいとしい日常。長編日記体小説

原稿が進まない作家の私。苔むす宿での奇妙な体験、盗作のニュースに心騒ぎ、子なき相撲に出かけていく。ある作家の奇想天外な日々を通じ、人間の営みの美しさと面白さが浮かび上がる新境地長編。

内容(「BOOK」データベースより)

「あらすじ」の名人にして、自分の原稿は遅々としてすすまない作家の私。苔むす宿での奇妙な体験、盗作のニュースにこころ騒ぎ、子泣き相撲や小学校の運動会に出かけていって幼子たちの肢体に見入る…。とある女性作家の日記からこぼれ落ちる人間の営みの美しさと哀しさ。平凡な日常の記録だったはずなのに、途中から異世界の扉が開いて…。お待ちかね小川洋子ワールド。

登録情報

  • 単行本: 240ページ
  • 出版社: 集英社 (2010/8/5)
  • 言語 日本語
  • ISBN-10: 4087713601
  • ISBN-13: 978-4087713602
  • 発売日: 2010/8/5
  • 商品の寸法: 19 x 12.8 x 2.6 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.5  レビューをすべて見る (11件のカスタマーレビュー)
  • Amazon ベストセラー商品ランキング: 本 - 243,918位 (本のベストセラーを見る)
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形式:単行本
著者の日常茶飯事を綴った日記風の書き物と思いきや、時々かつ束の間ではあるが、非現実的な時空に陥ってしまうという感じ。でも、またすぐに現実の世界に戻り、何もなかったかのように通常の生活が続いていく。正直言うと、いくつかの小さな謎を続編か何かで明かしてもらいたいと思うところもあるが、この少しだけ不可解なのが著者の面白味なのかも知れない。数人の登場人物をあげると、「あらすじ係」、「***荒らし」、「現代アートのツアーガイド」、「鶴のお嬢さん」、・・・等々。著者の、ちょっと大胆で冒険的な行動と、独特の観察眼による緻密な描写が絡み合って楽しい。
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4 人中、3人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By 東の風 トップ100レビュアー VINE™ メンバー
形式:単行本
 日記体で書かれた連作短編小説の趣がある逸品。
 主人公は、“本のあらすじをまとめる名人”と、自他ともに認める女性。彼女が体験する一年間の出来事は、まるで幻想奇譚と言ってもいいくらい風変わりで、奇妙な味があって、これは何とも言えず面白い小説でした。

 日記で綴る主人公の不可思議な話が織り合わされ、繋がっていくんですね。特に印象深かったのは、【一月のある日(火) 公民館の事務室から電話があり、『あらすじ教室』の講師を頼まれる。】の話と、【七月のある日(日) 飛行機と新幹線を乗り継ぎ、Tという名の遠い町へ行く。】の話。小説の流れの底に潜む特別な小石を見つけ、それをあらすじに盛り込むのが得意な主人子の技の匠(たくみ)を生き生きと描いた前者。主人子を含めたツアーの一行が見学場所を回るうち、ひとり減り、ふたり減りして行く話の展開がスリリングで、わくわくさせられた後者。

 作者の巧みな語り口に乗せられて頁をめくっていくうちに、いつしか、ここではないどこか別の世界を歩いていた、みたいな読み心地。小川洋子ワールドにはこんな魅力的な領域があったんだと、その不思議に楽しい読み心地を堪能させられた一冊です。

 小川洋子さん、東洋幻想奇譚風味のこの手の本を、これからも書いてくれないかなあ。期待したいです。
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12 人中、7人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:単行本
女性作家の一人称/変則的な日記……というしかけの連作。
しょっぱなから取材旅行の話などが出てくる。さぞ大がかりな長編を準備中で、しかもその作品を多くのファンから待たれている人気作家の話なのかと思いきや、読み進めていくうちに語り手がどうやらアパートの自室に引きこもりがちの一人暮らしで、ベストセラー小説を次々と発表するというよりは、小説賞の下読みをするうちに「あらすじをまとめる」才能を発揮するようになったということ、かんじんの自前の小説はいつまで経っても「現時点での執筆原稿は零枚」だということがわかってくる。そしてそのまま、日記という不思議なつぶやきめいた身辺小説(もどき)が続くのだ。

全編を通して、現世とあの世の境界めいた空気感がただよう。この不思議な感じは小川洋子というより、まるで初期の川上弘美だなどと思っているうち、深い緑に満ちた静寂の世界に絡め捕られていく。たとえば『薬指の標本』がピンク色の炭酸水のイメージだったとすれば、『猫を抱いて象と泳ぐ』の文章は紺青を帯びたガラスの質感だったし、この作品は苔むす森か木のうろの湿気た匂いを帯びている。文体も、いままでの作品と比べると、明らかに「柔らかさ」「得体の知れない湿り気」を意識させられる。とはいえ、たとえば登場人物が多くなると、とたんにお馴染みの硬質でつるんとした肌理の語り口に戻るので、ある意味、『博士の愛した数式』の頃からのファンでも安心して読むことができる。とてもチャーミングではあるが、これを語り手が「自分の思い」をあらすじのように綴っているという作品なのだとすると「語られていない現実」とはどれほど不安と孤独に満ちたものなのだろう。そう思うと怖くなる。

いずれにせよ、この作品は二重の意味で(というのは本を読んだ人にならわかるだろう)あらすじ紹介がむずかしい。個人的には『猫を抱いて象と泳ぐ』よりも、少なくとも前半は文学の冒険とでも呼びたくなるようなおもしろさを感じる。後半は「この作家ならでは」の芯のある突きぬけた感じがするので、こぢんまりとした雰囲気の作品のわりに一粒で二度美味しい、と言ってもよいかも。
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