日記体で書かれた連作短編小説の趣がある逸品。
主人公は、“本のあらすじをまとめる名人”と、自他ともに認める女性。彼女が体験する一年間の出来事は、まるで幻想奇譚と言ってもいいくらい風変わりで、奇妙な味があって、これは何とも言えず面白い小説でした。
日記で綴る主人公の不可思議な話が織り合わされ、繋がっていくんですね。特に印象深かったのは、【一月のある日(火) 公民館の事務室から電話があり、『あらすじ教室』の講師を頼まれる。】の話と、【七月のある日(日) 飛行機と新幹線を乗り継ぎ、Tという名の遠い町へ行く。】の話。小説の流れの底に潜む特別な小石を見つけ、それをあらすじに盛り込むのが得意な主人子の技の匠(たくみ)を生き生きと描いた前者。主人子を含めたツアーの一行が見学場所を回るうち、ひとり減り、ふたり減りして行く話の展開がスリリングで、わくわくさせられた後者。
作者の巧みな語り口に乗せられて頁をめくっていくうちに、いつしか、ここではないどこか別の世界を歩いていた、みたいな読み心地。小川洋子ワールドにはこんな魅力的な領域があったんだと、その不思議に楽しい読み心地を堪能させられた一冊です。
小川洋子さん、東洋幻想奇譚風味のこの手の本を、これからも書いてくれないかなあ。期待したいです。