この本は、著者みずから原子力発電所に下請労働者として働いた、約1年間の記録である。
この本の大きな特色を挙げれば、極端な告発のかたちをとっていないことであろう。しかし淡々とした記述がむしろ、原発での労働のおそろしさを生々しく伝える。
加えて、ここに描かれているのは、「腹を背にして」働くものたちの姿である。
「働かざるもの喰うべからず」を金科玉条に、私たちの社会では、原発での労働さえどこかで容認してしまう。しかし、こんな労働がほんらい、あっていいものなのだろうか。
新たに文庫化されるにあたって、巻末に著者が一枚の図表を載せている。これが示すのは、電力会社で被曝するのは圧倒的に下請社員であって、東電の本社社員の被曝量は着実に減少してきたという事実である。
ここでもまた、著者からの強い告発はない。しかし、ひるがえって、いままさに生じている現実に思いを馳せるとき、この本を読んで、わきあがる感情を抑えずにいられない。