本書を1995年に買っていたがまさかこんな形で読むとは思わなかった。
読みたくなかった。
悪夢である。
福島の事故は今のところ、本書が、福島第1原発6号炉でシミレーションした重大な事故(BWR2:炉心冷却系が故障、炉心が落下する。水蒸気爆発は溶融体が格納容器の床に落下したときに起こり、格納容器が破壊する)ではない。そのBWR2のシミレーションでは急性の死とガン死者がシミレーションされている。そのシミレーションでは195度の方向に風が吹いたとき、240度のとき、330度のとき、345度のときの急性の死者の発生がシミレーションされている。またガン死者は南西方面210度の線にしたがって344万人と予測されていた。避難基準(長期の避難すべき範囲)もシミレーションされ、緩い基準の場合半径150kmが、比較的厳しい基準の場合半径300kmとほぼ本州の半分がおおわれるとシミレーションされていた。(本書34〜35ページ)
本書はシミュレーション、防災編、知識編からなっている。シミュレーションでは上記のようなシミュレーションが泊原発からもんじゅに至る全国17原発について行われている。<防災編>では放射能から身を守るにはが丁寧に書かれている。<知識編>では原発の基礎知識と重大事故の基礎知識がわかりやすく書かれている。
<防災編>では放射能雲の通過と、通過後の対策について書かれている。放射能雲の通過後の対策については「地面汚染データにもとづくきめ細かな避難区域の設定が必要であろう」として以下の基準をあげている。(117ページ)
緊急避難地域 毎時0.076シーベルト
数日以内避難地域 毎時 0.0083シーベルト
政府の指標に基づく避難地域 毎時0.0006シーベルト
著者の瀬尾さんは1940年生まれ、京都大学大学院終了後京大原子炉実験所助手、1994年ガンのため逝去。本書の最後に収録された小出裕章さんの「瀬尾健さんと本書」によると、原子力の事故について「これまで国や電力会社はそのことに関する知識を故意に隠してきたし、大災害になった場合、どのようにして自らの身を守るかについても知識は与えられてこなかった。避難訓練などすれば、原子力発電に対する国民の不信を呼び起こすだけだというのが、国と電力会社の姿勢なのである。残念ながら私たちは私たち自身で身を守る意外にない。本書は、そのための基礎知識、予想される大事故の具体的な姿、そして具体的な身の守り方、さらには日本各地の個々の原子力発電所について災害の及ぶ範囲などを、懇切丁寧に書き起こしたものである。今後、私たちが何年間原子力とつきあわなければならないのか分からないが、私たちが原子力を利用するかぎり、本書は決定的に重要な役割を担うであろう。」とある。
本書の表紙が黒字にオレンジなので恐怖をあおるが、本書は決して恐怖をあおる本ではない。事実を書いた本である。しかし、その事実が、現実になってみるとこれほどの恐怖だったとは言葉を絶する。筆者は千葉県在住で、正直言っていま現在も怖い。本書は今手に入りにくいかもしれない。しかし絶対に読まれるべき本です。