これは極めて面白い本だ。メリハリのある文章と衝撃的事実のオンパレードで実に快調に読み進めることができる。
作成から50年が経過し、公開されたアメリカ政府の機密公文書、その中に「正力ファイル」と呼ばれるものがある。
CIAのスパイで「ポダム」という名を与えられた正力松太郎が、CIAの要請に従う形で、自らが持つ読売新聞と日本放送を最大限に活用してアイゼンハワーが打ち出した「原子力の平和利用」を日本国民に対して猛烈にアピールし、衆議院議員として中曽根康弘とともに原子力予算を成立させるなどして原子力発電を強引に進めて行く。日本における原発のスタート地点が、「必要に迫られて」ではなく、CIAの意図によるものであったことはしっかりと頭に入れておく必要がある。
本書の主要な主張である「日本の沿岸部に並んだ54機の原発は、核地雷である」という考え方は私も思っていたことである。通常のミサイル一発で原爆以上の量の放射能を撒き散らすのだから、日本を邪魔に思う国にとっては鴨がネギをしょってきたようなもの。そもそも戦時中にはあり得ない発電方式なのだ。それが日本に54もあるという現実を見たとき、それが誰かによって計画された罠だと考えることは充分に可能だ。
チェルノブイリ事故が、直前の直下型地震により制御棒の挿入ができなくなったために起きた、という事実と、それを伝える事故調査委員会の報告を世界中のマスメディアが無視したという事実には驚愕を覚えた。これは、地震国日本で反原発の動きが出るのを原発マフィアが恐れたからだという。
その原発とマフィアの手下となり、情報の隠蔽と捏造により原発を推進してきたのが政治家、官僚、御用学者、メディア、企業の黒い五角形である。その癒着の実態を徹底的に暴いていく切れの良さには喝采を送りたくなると同時に、問題の根の深さには憂鬱な気分にさせられる。
マイナスの話だけでなく、九州大学、太田俊昭名誉教授のチームによる次世代カーボンファイバーを使った高効率の洋上風力発電プラント、東北大学工学部、斎藤武雄名誉教授が開発した、太陽熱を熱源として利用して蒸気で独特の「シンラ・タービン」を回し、太陽電池の2.5〜7倍の効率で発電する太陽熱発電など、画期的な自然エネルギー技術なども紹介されており、石油やウランなどのエネルギーメジャーからの妨害がなければ、これら低コストのエネルギーが普及していくことは間違いない、という希望を感じさせてくれる。
最後に一言。
これまで、医療や食品、化粧品などの常識をことごとく覆してきた著者が、地球温暖化だけはそのまま受け入れているのがおかしかった。これも原発推進のための詐欺なのだから。