今事故を起こしている福島原子力発電所のうち、
日立製の原子炉圧力容器の強度設計をされていた元設計技師の方の本です。
タイトルに原発はなぜ危険かとありますが、
ここで議論されている原発は、今話題の福島原子力発電所を含めて
設計・建設されてから40年以上たったものを指します。
従って、ここで議論されている原子力発電所の危険性というのは、
比較的新しいものと同様に運転されている比較的初期の原子力発電所が
そのまま運転されている状態のことを言っています。
より古い原発に多くの危険性が予見される理由として、
日本の原子力発電の設計上の基準はアメリカの基準をほぼそのまま
流用されてきたのだが、それらが後の材料学などの知見によって
より厳しく改訂されてきたにも関わらず、日本にもアメリカにも
古い設計基準の原子炉圧力容器を使用した発電所が稼働中であること。
また、原子炉などの金属材料の安全率は他の化学プラントや建築物に
比べてギリギリの余裕のない安全率しか想定しておらず、
従って古い安全基準のままであるとより危険性が増すこと。
加えて、金属材料の温度差による脆性破壊という現象や、
中性子によるステンレス材料の経年劣化という現象はここ数十年の内に
知られるようになった現象であり、それらを考慮していない原子力発電所が
数多く存在するということ。
また著者は日本の原子力保安院と電力会社と製造メーカーの安全管理についても、
メーカーの論理としては安全性を追求するということは経済性と矛盾する場合があるので、
より厳密な安全管理の仕組みが必要だとおっしゃっています。
この本の一番最後の章で、ごく手短に原子力発電が必要とされている理由や、
ニューサイエンスのこと、新しいライフスタイルについての展望などが披瀝されていました。
人間の欲望の増大がそのまま原子力の必要性という論理に
繋がっているというのが、著者の意見のようです。
手に入るエネルギーに合わせて消費が考えられるのではなく、
消費の増大を前提としてエネルギーを生産しようというのは、
確かに、ネズミ講のようなある種の借金地獄のようなものかもしれません。
原子力発電所の作り続けつつその必要性を説くというのは論理が逆転しているのではないかという著者の言葉は、
その通りかもしれないと思いました。
ついでながら、この本は今年2011年に岩波書店より重版されるようです。