雑誌『SWITCH』の連載をまとめた一冊。「百景」といいながら三十三景しか掲載されていないので、おそらく残りの67景も今後追って続編として刊行されるのでしょう。
40代のKYON×2が原宿界隈でたたずむ写真、原宿にまつわる回想エッセイ、彼女と長年のつき合いがある業界関係者との対談の3方向から原宿を照射してみせる、そんな趣の一冊です。この構成がなかなかうならせます。
わけてもKYON×2のエッセイは白眉と言えます。
10代〜20代にかけてのアイドル時代の出来事を回顧しながら綴る味わいある文章。
人生のどちらかといえば影のある“あの頃”を切り取る冷徹な眼差し。
そうした決してバラ色ではない人生のあれやこれやの積み重ねの果てに今の自分がいるんだという確かな手ごたえ。
厚木から遊び通った原宿。芸能界デビューして一時期暮らした原宿。
KYON×2の前にKYON×2なく、KYON×2の後にもKYON×2なし、といえる彼女の特異な存在力を育んだ原宿という街を浮かびあがらせます。
そもそも彼女のエッセイの確かさは1988年刊のエッセイ
人生らしいね (Oliveの本)」(マガジンハウス)で証明済み。あの本は彼女が単なるアイドルではないという思いを強く抱かせるものでした。
そんな彼女の円熟味を増した今であるからこその、興趣に富んだ文章にこの「原宿百景」でまた出会えたことがとても嬉しく思っています。ですが、わずか11編しかないことが大変惜しまれもするのです。
もっと彼女の文章を読みたい、そんな今の私の渇望感を続編がうめてくれることを強く期待しています。