エジプトの砂漠から1700年の時を越えて発見された『ユダの福音書』の翻訳と解説。
前半は福音書の訳、後半は解読にも従事した学者たちの解説である。
この福音書は現行の4福音書とはまったく違った視点に立ってキリストの教えを記述しており、初期キリスト教世界の教義の豊饒性や人間の進行の多様性を伺わせるものであり、非常に興味深いもののである。
欠落部が多く、今ひとつ文意がとりにくい場所やまったく記述が残されていない部分があるのが残念である。発見当初のよい状態で解読が進めばより多くのことが知れたと思うと悔やまれるものである。
この書は純粋にグノーシス派に属するある初期キリスト教の一派とのその教典に関する書物であり、キリスト教神学の基礎的な知識や興味のない人には理解しにくいと感じた。
翻訳や解説は「わかりやすい」と記されてはいるが、正直言ってやはりわかりにくいなあと思う(内容からして限界があるのは承知の上で)。
同じく日経BP社から出されている姉妹編とも言える『ユダの福音書を追え』はユダの福音書を巡る人々の欺瞞と強欲の過程を描いたノンフィクションであり、色合いはかなり異なる。
ユダの福音書それ自体に興味のある人は本書を、考古学や古美術業界やその舞台裏といった人間の営みの方に興味が強い人には『ユダの福音書を追え』を薦める。