1789年に勃発したフランス革命によって捕らえられ、ギロチンの斬首刑に処せられたマリー・アントワネット。彼女が生きた十八世紀後半の前後百年間、1683年〜1883年にかけてヨーロッパならびにロシアで起きた事件や活躍した人物たちのスキャンダラスなエピソードを取り上げながら、その背景にあったかもしれない出来事や相互関係を紹介していくミニ・コラム集。
全部で100のコラムのそれぞれは2頁ほどと小粒ながら、著者の語り口の上手さ、歴史的エピソードの切り口の面白さで、あれよあれよと、頁をめくる手が止まらなくなっていましたね。歴史上の点として見えていた人物や事件などが、読み進めていくうちに線としてつながっていき、それとともに、十八世紀〜十九世紀にかけての近代ヨーロッパという時代が秘めていた血なまぐさい匂いが漂ってくるような、そんな妙味がこの一冊にはありました。
当時の君主たちの命がけの権力闘争や、王族のスキャンダルなどを取り上げた【魑魅魍魎の宮廷世界】。チャイコフスキーやドストエフスキーといった芸術家たちにスポットライトを当てた【芸術家という名の怪物】。十八世紀ヨーロッパの奇妙な流行などを垣間見ていく【宮廷の外もまた・・・・・・】。以上、大きく三つの章で構成されています。
とりわけ印象に残ったのは、「フランス革命からフランケンシュタインへ 一八一八年」「フランケンシュタイン誕生前夜 一八一六年」と続くふたつのコラム。フュースリの『夢魔』の絵を皮切りに、そこから展開される歴史の不思議な因縁、つながりに戦慄させられました。
戦慄させられると言えば、単行本表紙カバーに描かれたスペイン王室のカルロス二世の肖像画も怖いなあ。この少年の青白い顔に、当時の西欧社会の歪みのようなものが象徴的に出ている気がして、眺めているとぞっとします。