佐々氏の評論ものはやはり少々難しい。『危機の政治学』の難しかったのなんのって。東大法学部卒の超インテリだから、でしょうね。
反対に、ノンフィクションものは俄然面白い。権力におもねることなく、長い物に巻かれることなく、常に現場を歩み続けてこられたゆえであり、激しく共感させられることが多いです。
この『危機管理最前線』は、評論とノンフィクションが混ざっていて、難しい部分と面白い部分があるという感じです。
特に後半は、「上司の慶事より部下の弔事」と「適切な感情移入」が帝王学の肝心と喝破する著者が、実際に魂の震える思いをされた事柄が記されていて、涙を誘います。とにかくこの姿勢は過去の著作から一貫していて、ある面「ベタ」ではありますが。
しかしこの、ぷんぷんと男臭いベタは、世の中から決して失われないだろうし、メガネのふちに指を添えて「ふん、くだらん」とさげすむような人であっても、やっぱり感動の涙にむせぶことはあると思うのです。
著者のこの「ベタ」を、これからも味わいたいものです。