著者の最新刊。自分の琴線に響いた一文にこだわることをもって読書の要諦と述べたのは大塚久雄であるが、著者自ら「一行でも読者の心に残る文章があったならば、筆者にとって望外の幸せである」(254頁)というだけあって、今日の国際金融の現実を剔抉する洞察に富む一書であり、数多くの犀利な一文が読ませる。備忘も兼ねて、幾つか拾っておきたい。
「一番怖いのは、過剰電流が流れ続けて回路全体が破損することだ。・・・ 電子回路には、過剰な電流が流れないように抵抗が組み込まれ、フューズが装備されて、その回路を自衛するシステムが埋め込まれている」(73〜74頁)。
「金利が上昇するもう一つの要因を忘れてはならない。それは、他人にお金を貸したくないという状況が到来することだ。・・・ つまりインフレ期待がなくても、疑心暗鬼は容易に金利上昇をもたらすのである」(104頁)。
「金融理論だけが、リスク・フリー資産という幻想の社会を作り出してしまったのである」(120頁)。
「中銀による国債購入は、いわば中銀と国とのキャッチボールであり、民間経済からみればまさに「無から有を生じる」作業である」(143頁)。
「現代の通貨は、一種の資産担保証券のようなものである。・・・ 現代の信用通貨はそれが明日も流通するだろうという交換性への期待感を担保に設定するという、思想史的に大胆で革命的な商品である」(144〜145頁)。
中央銀行制度という「国家的錬金術の発明」(143頁)と1971年8月15日の「ドルと金の兌換停止」(207頁、いわゆるニクソン・ショック)などを基底とする「二十世紀流の負債拡大に依存した驚異的な経済発展モデル」(20頁)は、「経済の金融化」(190頁)や「財政の金融化」(88頁)を招来し、本来黒子であった金融のレバレッジ的拡大が特に先進国において実体経済を破壊しつつあるのは間違いのないところであろう。そして、このつけが近い将来改めて払われねばならないということもまた確かなことであるように思われてならない。