芸能プロダクションに所属し、占星術に関心なき人々(おもに若い女性)に少しで
も興味を持って貰う、いわば占星術の普及に当たるのも、なるほど、わが日本では
「占星術界の貴公子」鏡氏にしか出来ない仕事でしょう。
だけども能ある鷹は〜じゃないですが、「僕が英国に出向いては夢中で最新の占星
術トレンドに触れていた1980年代後半から90年代前半は…」(「あとがき」320頁)
と語る、英国占星術協会に所属し、占星術関連洋書の翻訳も多数なさっている氏の、
占星術研究家としての顔−タレントとしてのでなく−そちらの顔に興味を抱きその引
き出しの一部でも伺おうと望む人にとってはこの一冊はじつに格好の書です。
内容は氏の元来打ち込んで来た、心理占星術と'80年代を席巻した、古典派の占星術
とを駆使して、「日蝕」「医療占星術」「グレートコンジャンクション」等、13の占
星術キーワードから綺想を拡げてゆく、と云うもの。占星術のみならず、「僕も幼い
ころには、種村季弘氏や澁澤龍彦氏らが紹介した、そうした魔道の世界におびえつつ
もあこがれたものだった」(162頁)とある通り、オカルト学だのヴァールブルグ学
派だのと云った、西洋神秘思想にも通暁した氏ならではの、広がる綺想の下に潜む奥
ゆきの深さも読み進めるうえでの愉しみのひとつといえるでしょう(『ユリイカ』に
連載されていただけの事はありますね)。
亦この新装版(旧版は'01年出版)に「付録」として加筆された、「占星術の近代
アラン・レオから心理占星学へ」。これのみエッセイでないですが、占星術の近代史
を知るうえでとても有益な文章である事を付け加えておきます。
勿論、占星術関連洋書の参考文献記載も沢山ありますので、洋書に取り組みたいけ
ど何処から取っ懸かろうか、と迷っている向きにもお薦めです