筆者の國 雄行氏は、首都大学東京大学院人文科学研究科准教授で、博士(史学)を取得している研究者です。当然切り口は歴史資料を丹念に追いながら、平易な言葉で説明してありました。専門書というより啓蒙書の趣が感じられますが、明治の社会史、風俗史、文化史、国際交流史にも通じる内容ですし、興味深い記載が連なっています。
仏師であった高村光雲が上野で開かれた第1回内国勧業博覧会のために白衣観音の制作を頼まれたエピソードや、パリの万国博に出品の多くは陶磁器で、香蘭社や七宝の作品の評価が高かったことなどが記されていました。大阪でのウォーターシュートやイルミネーションはまさしくアトラクションとしての醍醐味が感じられるものでした。東京勧業博覧会の夜景など、当時の写真や絵も掲載してありますので、イメージは伝わるでしょう。
博覧会の跡地は、東京の上野は公園に、京都は岡崎公園と平安神宮に、大阪は天王寺公園と新世界になっており、今でもそれぞれ動物園というアトラクションの後継があり、美術館を有する文化の香りが感じられる場所となっています。
本書の内容です。
博覧会とは何か? プロローグ、万国博覧会の誕生(フランス内国博覧会からロンドン万国博覧会へ、見世物と薬品会 日本における博覧会の源流、慶応三年のパリ万国博覧会) 明治初期の博覧会(日本はじめての博覧会、ウィーン万国博覧会 「自主の精神」の発見、フィラデルフィア万国博覧会 産業オーケストラ) 内国勧業博覧会の誕生(内国博は見世物ではない、内国博の定期化、内国博の浸透、岐路に立たされる内国博) 遊園地化する博覧会(明治三三年パリ万国博覧会と祝祭、変貌する内国博、万国博構想の挫折と内国博の終焉) 明治時代と博覧会 エピローグ