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本書は,以下の12章にわたって,学生が博士号を取るために,学生と,指導教員と,研究科とが,どのような「共同作業」をしなければならないかを明らかにしています。
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( 1)学生は「その分野のプロの研究者になる」というはっきりとした目標を持つことが大切である。
( 2)学生は,博士課程に入学する前から大学院等に関する情報を収集しなければならない。
( 3)博士課程の本質は,その分野のプロの研究者を育てることにある。
( 4)学生は,プロの研究者としての水準を知り,それを超える努力をする決心をしないと,途中で挫折する危険性が高い。
( 5)研究の型には,1.探究型研究,2.検証型研究,3.問題解決的研究という3つの型があるが,博士課程として最適なのは,2.検証型研究である。
( 6)研究の成果として提出する博士論文には型があり,1.序,2.先行研究,3.研究方法,4.成果,5.議論,結論と貢献という共通の型を踏襲すべきである。
( 7)博士課程のプロセスでは,3年間の研究段階ごとに,何をすべきかの研究計画が出発点となり,計画表に基づいて進捗状況を常にチェックし,小論文を公表しながら,完成を目指すべきである。
( 8)学生は,指導教官に対して,初めは「理想的なロール・モデル」として,次には,情報を与え合う「研究仲間」として,最終的には,研究と指導方法を分かち合う「同僚」として接することができるように,段階を踏んでうまく付き合わなければならない。
( 9)セクハラ,嫌がらせ等,研究に対する障害がある場合には,それを取り除く必要がある。
(10)審査制度を理解して,特に口頭試験の準備を怠らないようにしなければならない。
(11)指導教員は,学生の望んでいることをよく理解し,学生の人格を尊重しながら,定期的に学生に会い,効果的なフィードバックを行ないつつ,学生の研究の進捗状況を常に把握しなければならない。
(12)研究機関は,研究設備を整え,学生に財政的な支援をするだけでなく,学生と指導教員のコミュニケーションがうまくいくように,指導形態のガイドラインを作成するなど,制度自体の改善に努めつつ,学生の論文作成の進捗状況をモニターしなければならない。
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どの章も,多くの経験に裏付けられた貴重なアドバイスがちりばめられており,本書は,博士号を取ろうとする学生にとっても,指導のあり方に悩む教員にとっても,また,博士号を授与すべき機関としての大学にとっても,福音となる手引書となっています。
特に,(8)では,「指導教官を『育てる』必要性」という項目があり(155頁),そこでは,博士課程とは,一方で,学生を学習者から研究者へ,研究者から教育・研究者(同僚)へと育てる課程であるとともに,他方で,指導教員も学生によって教育される課程でもあるということ,すなわち,博士課程は,最高の教育を実現できる課程であることが明らかにされています。
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私は,研究科の同僚から薦められてこの本を読んだのですが,今までの自らの研究指導が十分でなかったことを痛感しました。
そこで,早速,学生の3年間の研究計画とその進捗状況をチェックする表(「博士論文作成・論文指導のスケジュール管理」表)を作成し,研究科に入学する学生に配布すること,および,この情報を全員で共有するため,研究科のホームページにその表を掲載することを提案することにしました。
また,本書の特色である,「博士課程は,学生と指導教官の共同作業である」(229頁)という精神を活かすため,本書の「付録」に掲載されている「学生のための研究進捗自己診断」(300頁)を参考にして,「三当事者(大学院生・指導教員・研究科)の博士論文に関する自己点検リスト」を作成しました。そして,これを学生と指導教員とが共有するために,研究科のホームページに掲載することを提案することにしました。
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本書を読むと,(1)博士号は,学生一人で取るものではないこと,(2)学生と指導教員と研究科が協力し合って「プロの研究者」を育て上げ,その結果として,その学生に博士号を与えるものであること,(3)それを実現するために,学生も,教員も,研究科自体も意識改革と自己点検を進めるべきであること,(4)特に,教員にとって,研究指導は,確かに手間も暇もかかるが,それによって報われる成果は,何ものにも代え難いものとなることを理解することができます。
本書を読み,そのような意識改革,自己点検の実践を開始した者として,学生の博士号の取得に関与するすべての人々に対して,本書を推薦したいと思います。
なお,本書の原著(How to get a PhD: a handbook for students and their supervisors)は第4版(2005)ですが,原著には,すでに,
第5版(2010)が出ており,研究方法,論文の書き方,自己点検等に関して内容が追加されていますので,原著を読む余裕のある方は,最新版(第5版)を参照されるとよいでしょう。