変わったものだ、と感心しきりです。
だって、万人に受け入れられる作品とは、昔は
到底考えられませんでした。
数年前までは、たとえば新宿あたりの小さな劇場で
こっそりと上映会が開催されていた、
カルト映画です。キューブリックのDVD BOX
にさえも入っていない希少価値ものです。
メッセージは、決して、カルトでも
ないし、作りも、今から見れば、驚くほど前衛的でも
ないんですが(公開当時は、かなり驚嘆すべき演出)、
とにかく、こういう作品をロープライスでみんなに
販売するに至った、そのソニーピクチャズの企画の
度量ってすごいです。
米ソ冷戦、原爆反対、戦争反対、大量殺戮反対、
もっと言えば、人間のおろかさをブラックユーモアと、
今は亡き才人ピーターセラーズという仕掛けを使って、
病的な空間にフォーカスをあてて
演出した、映画史に残る稀有なプロパガンダです。
キューブリックの天才ぶりを十分堪能すると同時に、
ラストでの音楽と映像のミスマッチが、
寒気をするほどの恐怖をいだかせ、後味の悪さを残しつつ
記憶の奥に沈殿する、すさまじい作品です。
こういう作風は、オプティミストなスピルバーグには、
絶対到達できない、ペシミストなキューブリックだから
できた、狂気と正気「紙一重な世界」です。