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博士の愛した数式 単行本 – 2003/8/28

5つ星のうち 4.4 649件のカスタマーレビュー

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商品の説明

受賞歴

第55回(2003年) 讀賣文学賞小説賞受賞
第1回(2004年) 本屋大賞受賞

商品説明

   1990年の芥川賞受賞以来、1作ごとに確実に、その独自の世界観を築き上げてきた小川洋子。事故で記憶力を失った老数学者と、彼の世話をすることとなった母子とのふれあいを描いた本書は、そのひとつの到達点ともいえる作品である。現実との接点があいまいで、幻想的な登場人物を配す作風はそのままであるが、これまで著者の作品に潜んでいた漠然とした恐怖や不安の影は、本書には、いっさい見当たらない。あるのは、ただまっすぐなまでの、人生に対する悦びである。

   家政婦として働く「私」は、ある春の日、年老いた元大学教師の家に派遣される。彼は優秀な数学者であったが、17年前に交通事故に遭い、それ以来、80分しか記憶を維持することができなくなったという。数字にしか興味を示さない彼とのコミュニケーションは、困難をきわめるものだった。しかし「私」の10歳になる息子との出会いをきっかけに、そのぎこちない関係に変化が訪れる。彼は、息子を笑顔で抱きしめると「ルート」と名づけ、「私」たちもいつしか彼を「博士」と呼ぶようになる。

   80分間に限定された記憶、ページのあちこちに織りこまれた数式、そして江夏豊と野球カード。物語を構成するのは、ともすれば、その奇抜さばかりに目を奪われがちな要素が多い。しかし、著者の巧みな筆力は、そこから、他者へのいたわりや愛情の尊さ、すばらしさを見事に歌いあげる。博士とルートが抱き合うラストシーンにあふれるのは、人間の存在そのものにそそがれる、まばゆいばかりの祝福の光だ。3人のかけがえのない交わりは、一方で、あまりにもはかない。それだけに、博士の胸で揺れる野球カードのきらめきが、いつまでも、いつまでも心をとらえて離さない。(中島正敏)

商品の説明をすべて表示する

登録情報

  • 単行本: 253ページ
  • 出版社: 新潮社 (2003/8/28)
  • 言語: 日本語
  • ISBN-10: 410401303X
  • ISBN-13: 978-4104013036
  • 発売日: 2003/8/28
  • 商品パッケージの寸法: 19.3 x 13.5 x 2.3 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.4 649件のカスタマーレビュー
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カスタマーレビュー

トップカスタマーレビュー

投稿者 山科のうし トップ1000レビュアー 投稿日 2011/12/3
形式: 文庫
このところ少しずつだが小川洋子を読み続けていて、今更のようにようやく代表作である本書にたどり着いた。
しかし初期の短編集を読んできた立場としては、読む前には期待と共に不安もあった。
評判からすると本書はほのぼの感動系らしい。
だが今までの作品から読み取れたのは、
そういう要素を持ちながらも、意外にしたたかで、仕掛けが多く、一筋縄ではいかない作家の姿だった。
言ってみればあまりにも世間受けしてしまった本書は、ほのぼのを強調するあまり、
持ち前の毒のようなものを失って、
したがって私のようなある意味ひねくれた読者には魅力を損なってしまっている恐れはないのか?

読んでみて、たしかにこれは素直な本だろうと思った。
これまで感じてきた、かすかに毒気をはらんだ謎めいた雰囲気、
曖昧さが開いてみせるかもしれない可能性、という感じは、わずかに見受けられるとはいえ希薄である。

だがこの小説は小説で、小川洋子の一つの達成であるのはたしかだろう。それははっきり感じられた。
旺盛な創作活動をずっと続けているわけだし、
私がまだ知らないだけで、ネットの作品紹介など見てみても、
いわば謎や毒の路線の本もいろいろありそうで、それはまたそれで別の機会に
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形式: 単行本
とても静かで、哀しくて、暖かい本でした。
80分しか記憶の持たない「博士」と、そこに家政婦として通うことになった私、ルートと呼ばれる阪神ファンの私の息子の三人の日々が描かれています。
小説内にいくつもの数式や、証明といったものがでてきますが、数学のことをほとんど覚えていない私でもそれが全く邪魔にならず、むしろ美しいものとして感じられました。
読みすすめていくうちに、どんどんと、どこかとても居心地のいい場所に閉じ込められていくような、澄んだ水を覗き込むような気持ちにさせられていきました。
それは、文体や、描写からにじみでるこの小説の雰囲気といったもので、
そしてそれを何よりも表しているのが、80分しか記憶の持たない、ひどく優しい博士の存在でした。
子供をとても大切にしている、
素晴らしい質問をしたと思わせる才能を持った博士。
読み終えた時に、ゆっくりと暖かい気持ちになれる、少し前向きな気持ちで明日からやっていこうと思う、それが小説のもつ絶対の力であると私は思っていますが、この本にはそれがあふれていました。
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形式: 単行本
記憶が80分しか持たない博士とそこに勤める家政婦とその息子。
たった3人の関係や博士の家という閉じられた空間であるはずの設定も、お互いの思いやりを描くことによって、数字のような無限に広がる可能性を持つものに描かれている。
数字以外には興味の無いはずの博士は子どもには無償の愛を注ぐ。それは子どもには数字と同じく無限の可能性が秘められているからに違いない。
小川洋子の作品は一見無機質に見えるけれども、読後にはいつもぬくもりが残る。今回は特に素晴らしい傑作だと感じた。絶対にオススメ!
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形式: 文庫
遅ればせながら読んでみた。こういう小説を読むと、小説家は選ばれた人がなるべき職業であり、特別な創造力が必要な職業なんだろうなと思ってしまう。

タイトルだけではなく、表紙裏の作品紹介にも「奇跡“愛”の物語」という言葉が使われているが、この「愛」という言葉を言い換えれば「美しさ」になるのだと思う。数字の美しさと美しい愛。

そう思ってみれば、綺麗で美しいが、語り手である家政婦の私や彼女の息子の年齢を考えれば不自然とも思える彼女達と博士の交流も納得がいくような気がする。20代に過ぎない私が何故これ程献身的なのか、10歳に過ぎない息子が何故これ程人の心を読めるのかが、小説中では殆んど説明されていない。彼女の生い立ちが簡単に綴られているだけだ。きっと、作者はこれらの説明を、作品中不必要なものとしてわざと省略したに違いない。

理由は、美しい物語に不必要なエピソードだからだ。美しさに不要な要素を全て切り落としたこの作品、「小説」としては非常に完成度が高い。素晴らしい作品だと思う。

ただ、この小説を素晴らしいと感じることと、好き嫌いは別だ。感動もしなかったし、好きになれない。あまりにも綺麗で美しすぎるからだ。
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