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博士の愛した数式 単行本 – 2003/8/28

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商品の説明

受賞歴

第55回(2003年) 讀賣文学賞小説賞受賞
第1回(2004年) 本屋大賞受賞

商品説明

   1990年の芥川賞受賞以来、1作ごとに確実に、その独自の世界観を築き上げてきた小川洋子。事故で記憶力を失った老数学者と、彼の世話をすることとなった母子とのふれあいを描いた本書は、そのひとつの到達点ともいえる作品である。現実との接点があいまいで、幻想的な登場人物を配す作風はそのままであるが、これまで著者の作品に潜んでいた漠然とした恐怖や不安の影は、本書には、いっさい見当たらない。あるのは、ただまっすぐなまでの、人生に対する悦びである。

   家政婦として働く「私」は、ある春の日、年老いた元大学教師の家に派遣される。彼は優秀な数学者であったが、17年前に交通事故に遭い、それ以来、80分しか記憶を維持することができなくなったという。数字にしか興味を示さない彼とのコミュニケーションは、困難をきわめるものだった。しかし「私」の10歳になる息子との出会いをきっかけに、そのぎこちない関係に変化が訪れる。彼は、息子を笑顔で抱きしめると「ルート」と名づけ、「私」たちもいつしか彼を「博士」と呼ぶようになる。

   80分間に限定された記憶、ページのあちこちに織りこまれた数式、そして江夏豊と野球カード。物語を構成するのは、ともすれば、その奇抜さばかりに目を奪われがちな要素が多い。しかし、著者の巧みな筆力は、そこから、他者へのいたわりや愛情の尊さ、すばらしさを見事に歌いあげる。博士とルートが抱き合うラストシーンにあふれるのは、人間の存在そのものにそそがれる、まばゆいばかりの祝福の光だ。3人のかけがえのない交わりは、一方で、あまりにもはかない。それだけに、博士の胸で揺れる野球カードのきらめきが、いつまでも、いつまでも心をとらえて離さない。(中島正敏)


登録情報

  • 単行本: 253ページ
  • 出版社: 新潮社 (2003/8/28)
  • 言語: 日本語
  • ISBN-10: 410401303X
  • ISBN-13: 978-4104013036
  • 発売日: 2003/8/28
  • 商品パッケージの寸法: 19.3 x 13.5 x 2.3 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.4  レビューをすべて見る (613件のカスタマーレビュー)
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4 人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。 投稿者 萩原 湖太郎 トップ1000レビュアー 投稿日 2013/4/27
形式: 文庫
 映画を観てから、この原作小説を読んでみた。映画よりも良かったように思う(ただしそう思うのは、映画によって得た映像的イメージを思い浮かべながら読んだせいかもしれない)。

 それというのも、このお話は、数学なんて学校に置いてきたまま忘れてしまった家政婦が、年老いた数学博士との限られたやりとりの中で、数の世界に隠された神秘に触れ、これまで見えていなかったものが見えてくる…、というところに面白さがあるのだが、そんなことを映像で表現することは非常に難しいだろうから、映画では老博士と家政婦さんとその10歳の息子とのホノボノとしたやりとりを描くのが中心になってしまうからだ。

 小説の前半に、映画では登場しないエピソードの1つとして、件の家政婦さんが「1からnまでの連続した正の整数の和を求める」方法(公式)を捻り出す場面がある(これは、博士が10歳の子供に出した宿題)。家政婦さんの解答と博士が別の場面で示す解答と僕の解答は当然一致するのだが、3人のアイデアはそれぞれ微妙に異なっている。

 このシーンは僕にとってとても印象的で、ある問題に没頭し、閃きが訪れ、その閃きによって問題を見事解いたことに送られた博士の賞賛に対して、自然と涙がこぼれた。

 この小説の文体は僕の好きなタイプの文章ではなかった。しかし、そこには、数の世界の美しさに初めて気づいた時に感じる新鮮さが充分に表現されていると思う。
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79 人中、62人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。 投稿者 izu-k 投稿日 2004/12/21
形式: 単行本
とても静かで、哀しくて、暖かい本でした。
80分しか記憶の持たない「博士」と、そこに家政婦として通うことになった私、ルートと呼ばれる阪神ファンの私の息子の三人の日々が描かれています。
小説内にいくつもの数式や、証明といったものがでてきますが、数学のことをほとんど覚えていない私でもそれが全く邪魔にならず、むしろ美しいものとして感じられました。
読みすすめていくうちに、どんどんと、どこかとても居心地のいい場所に閉じ込められていくような、澄んだ水を覗き込むような気持ちにさせられていきました。
それは、文体や、描写からにじみでるこの小説の雰囲気といったもので、
そしてそれを何よりも表しているのが、80分しか記憶の持たない、ひどく優しい博士の存在でした。
子供をとても大切にしている、
素晴らしい質問をしたと思わせる才能を持った博士。
読み終えた時に、ゆっくりと暖かい気持ちになれる、少し前向きな気持ちで明日からやっていこうと思う、それが小説のもつ絶対の力であると私は思っていますが、この本にはそれがあふれていました。
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2 人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。 投稿者 読書散歩 トップ500レビュアー 投稿日 2012/3/26
形式: 単行本
著者はどんな動機でこの小説を書いたのだろう?
ドラマティックではないが,最後までストーリーに引っ張られた。
博士の家政婦となった私(主人公)。64才の博士は1975年の自動車事故で記憶が自由でない(記憶が80分しか続かない)。数学の証明問題に日々を費やし,私には数学の美的な世界,素数の魅力を語る。私には息子ルートがいる。タイガースファン。実は博士も,江夏のいたターガースが好きだった。
私はしだいに素数の世界にはまる。博士は実生活に無頓着。身奇麗でないし、食べ方には品がないが,息子のルートにも私にもいたって優しい。3人は仲良くなる。
私が義姉の告口によって解雇されるが,博士の家政婦は誰も出来ないので復帰。球場でのタイガースの応援とその後の博士の発熱と発病,博士の野球カード・コレクションと数学論文,オイラーの公式の不可思議,話題が続く。
ついに記憶が壊れ,専門の医療施設に入った博士。私とルートは,定期的に彼を見舞う。ルートは教員試験に合格,中学の数学教員になる。数学・野球・人間の愛。
著者は何がきっかけでこんなに面白い小説を構想したのだろう?
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85 人中、66人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。 投稿者 マナオさん 投稿日 2003/9/15
形式: 単行本
記憶が80分しか持たない博士とそこに勤める家政婦とその息子。
たった3人の関係や博士の家という閉じられた空間であるはずの設定も、お互いの思いやりを描くことによって、数字のような無限に広がる可能性を持つものに描かれている。
数字以外には興味の無いはずの博士は子どもには無償の愛を注ぐ。それは子どもには数字と同じく無限の可能性が秘められているからに違いない。
小川洋子の作品は一見無機質に見えるけれども、読後にはいつもぬくもりが残る。今回は特に素晴らしい傑作だと感じた。絶対にオススメ!
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