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単独行者(アラインゲンガー)新・加藤文太郎伝
 
 

単独行者(アラインゲンガー)新・加藤文太郎伝 [単行本]

谷 甲州
5つ星のうち 3.9  レビューをすべて見る (9件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容紹介

彼はなぜ、単独行(ひとり)を選んだのか――。
昭和初期、案内人(ガイド)を連れて行なう登山が一般的だった当時、加藤文太
郎は、ひとりで冬の北アルプスを駆け巡り、数々の画期的な記録を残した。
彼が遭難したときには、新聞で「国宝的山の猛者、槍で遭難」と伝えたほどで
あった。
しかし彼は、決して特別な存在ではなく、超人的な力を持っていたわけではな
かった。
ごく普通の人間的な弱さをもった加藤が、あえて単独を選び、苛烈な冬山に挑ん
だ理由とは――。

史実をもとにした真実の加藤文太郎像を、山岳小説の名手・谷甲州が、渾身の力
で描ききる大作。
『山と溪谷』連載に大幅な書き下ろしを加えて、ついに単行本化!
装丁:高柳雅人。

内容(「BOOK」データベースより)

昭和十一年一月、北アルプス・槍ヶ岳北鎌尾根で消息を絶った加藤文太郎。彼は、たったひとりで冬山を次々に踏破し、「単独行の加藤」として名を馳せていた男だった。案内人(ガイド)を連れた登山があたりまえだった時代、あえて単独行を選んだ彼は、決して特別な存在でも、超人的な力をそなえていたわけでもなかった。ごく普通の人間的な弱さをもった男が、なぜひとりで、しかも苛烈な冬山を志向したのか?構想35年。谷甲州が、史実を元に真実の加藤文太郎像を描ききる。『山と溪谷』に好評連載され、大幅に書き下ろしを加えた、本格山岳小説。

登録情報

  • 単行本: 512ページ
  • 出版社: 山と渓谷社 (2010/9/16)
  • ISBN-10: 4635340279
  • ISBN-13: 978-4635340274
  • 発売日: 2010/9/16
  • 商品の寸法: 19.8 x 14.1 x 4.1 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 3.9  レビューをすべて見る (9件のカスタマーレビュー)
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形式:単行本
読中、読後の最初の印象は作品の良し悪しというよりも、単独行者(以下「アラインゲンガー」)は小説かノンフィクションかどちらなのか判断に迷うということだ。アラインゲンガーの読者の多くは、その前に、新田次郎氏の「孤高の人」を読んでいると思う。まず、孤高の人とアラインゲンガーの加藤像があまりにもかけ離れていることに強い違和感を持ちながら読んだ。読み始めて、最初に覚える加藤像の違いは、その性格である。孤高の人の加藤文太郎は人との交流を大変苦手とし、わずかなコミュニケーションも図れないのに比べて、アラインゲンガーの加藤はまったくそうではなく、登山会の仲間との交流も多く、それほど特別に、孤立した人物には見えない。
アラインゲンガーの加藤像は、孤高の人のそれとはまったく正反対のものであり、作者がことさらに、孤高の人の加藤氏や吉田氏のイメージを覆すことに躍起となっている印象が強く残る。アラインゲンガーが2010年10月号の雑誌「山と渓谷」にも紹介されているが、孤高の人での吉田氏のイメージが実際とかけ離れているため、そのイメージを変えることが吉田氏を知る人にとってはどうしても必要であったとされている。
吉田氏のイメージがこれだけ違うのはいいとして、それにしても、では、なぜ新田氏が描いた吉田氏が(作中は宮村氏)、アラインゲンガーの吉田氏とはこれだけ異なる描写となっているのか、その理由、説明はどこにもない。
このように、孤高の人とアラインゲンガーの加藤氏や吉田氏の人物像があまりにも違うため、どちらが真実なのかわからないというのが正直な印象だ。
あくまでも、両方とも小説というならば、さまざまな作者の創作があるはずだ。両作者とも、山岳ノンフィクションの傑作、沢木耕太郎の「凍」のように、主人公から詳細のインタビューをしているわけでなく、両氏とも参考となる文献として、加藤氏の「単独行」をあげており、情報の多くをそれから取っていると思われる。にかかわらず、アラインゲンガーの加藤像は、孤高の人とはまったく逆であるため、アラインゲンガーがノンフィクションのように感じてしまうのである。
また、孤高の人では、加藤の社会人としての成長の過程や日本が全体主義へと傾倒していく社会情勢が描かれている。また、加藤氏や宮村氏(吉田氏のモデル)のそばには女性も登場し、小説として読むのに、非常に充実した物語構成になっており、読むものを飽きさせない。それに比べてアラインゲンガーはほぼすべて登山一色で物語が進行する。
いずれにしても、アラインゲンガーも山岳小説として読めば、読み応えは十分である。
このレビューは参考になりましたか?
6 人中、5人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By みたか VINE™ メンバー
形式:単行本|Amazon Vine™ レビュー (詳しくはこちら)
 大正末から昭和初期にかけて活躍した登山家、加藤文太郎、新田次郎の『孤高の人』のモデルとして知られる人物に取材した、極めてノンフィクション性の高いフィクションです。資料を徹底的につきあわせて書かれた、二段組、502ページの堂々たる大作と言えますが、ダレ場がないためすいすい読めます。

 読み始めから独特の違和感があるのは、山岳小説には通常あまり記載されたない、細かい心理描写、特に人間同士の感情的行き違いや、こだわりなどを相当書き込んでいることです。
 山岳小説は町中の物語と違って、書くことが多いのです。気象、地面の状態、装備、残った食料、時刻、登山者の体力状況など、それを全部書き込むと、心理描写の方は重要なポイント以外は削りこまざるをえません。
 が、ここで削られているのは、この時代、今と大幅に違ったはずの装備の問題です。終盤、加藤が遭難する場面でザイルをいつまでも捨てない描写に、わたしはそのザイルの今と違って圧倒的に重いはずの重量と材質が知りたくてたまりませんでした。しかし作家が記載するのは、この時なぜ彼がザイルをそこまで運んだのかという心理なのです。
 作者が興味を持っているのは、加藤がなぜ単独行者になったのか、なぜ雪山にこだわったのか、なぜ遭難したのか、それが彼のどういった心理によるものなのか、なのです。運や技術的問題ではありません。この辺、読者の好みにより、評価が違ってくると思われます。

 事実を丹念に追い徹底的に実在の人物心理に迫ろうとしたため、ここで描かれる加藤は変わった人、特別な天才のイメージではなく、わりといるちょっと嫌な奴となっていますが、その分親しみが持てます。
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9 人中、7人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:単行本
プロローグにおける加藤主導による北鎌尾根への突入及び遭難を匂わせる記述は、「孤高の人」における宮村健(吉田登美久)主導による突入及び遭難を否定して、新たな加藤文太郎像を描こうとしていることを宣言している。
「孤高の人」は、「単独行なら決して遭難しない」加藤を描くために、遭難の2年前に加藤が吉田氏を誘った登山記録を削除し、遭難の責任を吉田氏にかぶせた。それが吉田氏への侮辱であることは当然としても、加藤の超人性を前面に出すことも、決して登山家としての加藤をきちんと描いているとは言えないのではないか、おそらくそんな問題意識で書かれたものが本書であり、当時の登山の状況をふまえた加藤の登山への取組みを描きつつ、ある程度納得のいく形で北鎌尾根への突入に至るまでを描こうとしている。
ただし新資料があるというわけでもないようなので、「孤高の人」が「人間としての加藤」を描こうとしたものだとするならば、作者としての推測を交えつつ、より納得できる形での「登山家としての加藤」を描こうとした、ということなのかもしれない。
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