南極の第1次越冬隊は、映画南極物語でタローとジローの物語としてよく知られている。しかし、実際には、11人の人間が、狭い空間で、厳しい自然と闘いながら、人間関係の葛藤の中で過ごした1年だったのだ。
この本は、越冬隊長だった西堀氏の日記を基に、越冬生活を記述した書である。日記を基にしているので、淡々とした記述が続く。しかも、率直な筆運びで、何度も愚痴が入ったりする。特にマージャンに関する悪感情が何度も出てきて苦笑させられる。現場を知らない文部官僚や学者たちへの悪口もある。一方で、知恵を絞って、南極だからこそ出来る科学的観測をしようという姿勢は、すばらしいものがある。最後の責任は自分であるという隊長としての覚悟には頭が下がる。
劇的なストーリーがあるわけでもなく、時には退屈な記述の続くこともあるこの本が、何か心を打つのは、底に流れる真剣さ、を感じるからではないだろうか。