南極観測船「宗谷」が氷の海に閉じ込められ、旧ソ連の砕氷船に助けられたニュースは、子供の頃の記憶に鮮明に残っている。ラジオや新聞で連日報道されたし、ニュース映像の記憶もあるということは、当時の映像メディアの主流であったニュース映画などで何度も観たせいなのだろう。
その砕氷船の名前が「オビ」号だったことを、この本を読んで思い出し、非常になつかしかった。当時は、戦後復興に自信を得た日本人が様々な夢をかなえようと挑戦し始めた時代だったと思う。南極観測船や観測隊は、当時の人々の希望の象徴だったし、子供達の憧れだった。
経済発展していく日本が、当時の科学技術の粋を集めて本格化させた南極観測や、その主役となった観測船のことが、この本を読むと非常によく分かる。
また、この本を読んであらためて思うことは、白瀬探検隊から始まり、何と多くの日本人が南極調査のため、勇気や英知をもって、かつ、多大な苦労や努力を重ねて取り組んできたか、ということだ。
人々に夢や希望を与えるとともに、愚直なほど純粋に科学的調査に取り組んできた日本人の姿に想いをはせることは、経済繁栄のなかで多くのものを失った今の我々に必要なことかもしれない。