はるか昔、映画「南極物語」を見た。いい話ではあるものの、大して感動しなかった。若すぎたのだろうか、それとも時代のせいだった
のだろうか。当時はバブル経済が始まろうとする頃だった。
ドラマは木村拓哉が好きでなかったし、あまり期待しないで見始めたのだが、初回からいきなり頭をぶん殴られるような衝撃を覚えた。
敗戦間もない頃の日本に、国際社会の目が温かいはずがない。「負け犬が何しに来た、帰れ」とののしられる。
この時代の日本人の生きざまを見せつけられ、何度も泣けてきた。靴もはいていない子供たちが、わずかな小銭をにぎりしめ、南極観測の
ために募金しようとする姿にはやられてしまった。心にくい演出だ。子供を含めて俳優陣の熱演は素晴らしい。チームワークの良さが演技に現れ
伝わってくる。
それにあの犬たちだ。犬を飼っていないわたしでさえ感動するのだから、犬好きの人なら見てられないだろう。昭和基地に戻った倉持が、
雪をかきわけて犬たちを探す。遺体が出てくるのか、ちぎれた首輪なのか、それで生死がわかる。あのシーンはドラマ史上に残る名場面だ。
この年までドラマを見てきて、あれほど印象に残るシーンはなかった。遺体で出てきた犬たちに、思わず叫んでしまったよ。
「人間たちのためにすまない」ってね。何度も、何度も。リキは、いやもうよそう。
大震災の最中にこのドラマが制作されたことは、偶然とは思えない。時代の節目ともなる激動の年に、「JIN」と「南極大陸」に出会えた
ことは、幸運だったと思う。ひとりでも多くの人に見てほしい最優秀作品である。もはや視聴率などどうでもいいだろう。