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10 人中、9人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
初期の南極冒険を再評価する意欲作,
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レビュー対象商品: 南極大陸〈上〉 (講談社文庫) (文庫)
火星三部作以来、待望のキム・S・ロビンソンの和訳。夢と冒険とユートピアとディストピアの目くるめく展開。火星三部作の舞台である火星を南極大陸に置き換えたようだといってよい展開。まず、誰もが南極大陸又は火星にやってくるそれぞれの理由を持っていること。そして、南極大陸又は火星と真剣に向き合う人は誰でも南極又は火星が人間の世界の縮図だと知ること。また、南極(又は火星)に生きる人とその外で南極(又は火星)を資源としてしか見ない人々との価値観の対立(それが独立戦争のカタストロフィーにつながるか南極宣言につながるかの別はある)。共通しているのはこのコア部分だけでない。人物描写について言えば、さらに火星三部作との共通点が目につく。パワフルで美しく信じられないほど万能でありながら、それ故の悩みをもつヴァルは魅力的であるが、火星三部作で言えば、有能で感情の起伏の大きい美女マヤと誠実でパワフルで危機管理能力に優れたナディアを合体させたような人物である。男性陣もやはりおなじみキャラクターといってよい。ウェイドは理想主義で政治の妙をこころえているあたりジョンに似ているし、タ・シュウも火星を中継していてもおかしくない。またヒロコに匹敵する地母神メイリス、密航者のコミュニティ、その内部対立等の道具立てに至るまで火星三部作の翻案と思えるほどに酷似している。 このように綿密な取材からなる大作としての全体的構成からしてよく似ているのであるが、かといって先が読めるかというとそうでもない。今回の新しさは初期の極点到達のドラマを下敷きに登場人物の視点を借りて、初期の南極冒険(スコット、アムンセン等)を再評価している点である。特にシャクルトンの漂流について、新しい光のもとで描いたことが物語の奥行きを出している。また南極の地層の読み方をめぐる地質学者の対立という横軸もいい。 最後に言い忘れた両作の共通点がある。無類の風呂好きと見た。
2 人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
そのものズバリ、南極のお話,
By APRICOT (東京都) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 南極大陸〈上〉 (講談社文庫) (文庫)
何と形容すれば良いのか、難しい小説である。いちおう舞台設定は近未来らしいが、近未来SFと言ってしまっては言い過ぎだろう。そのものズバリ、南極のお話です…としか言いようがない。おもしろい事はおもしろい。南極に眠る鉱物資源をめぐる開発促進派と環境保護派のせめぎ合いや、地球温暖化の問題等、興味深いテーマがいくつも内包されている。だが、何と言うか…著者の南極への思い入れはビンビン伝わって来るのだが…冗漫と言うか、焦点がぼやけていると言うか…とにかく、これほど興味深いテーマを扱っていて、しかもページ数も十二分に費やしているのだから(上下合計で約850ページ)、もっとずっとおもしろい話になっていいはずなのに…という物足りなさを感じるのだ。 また、情報小説として見ても、イマイチに感じられる。南極についての私の知識が皆無に近い事もあるが、登場する組織や施設、科学的な発見やテクノロジー等が、どこまでが現実で、どこからがフィクションなのか、よくわからないのだ。 それでも、本書が書かれたのは1998年、まだ地球温暖化がそれほど騒がれていなかった頃なのに、この問題を取り上げた先見性は高く評価したい。さらに、足跡ツアーに参加した中国の詩人・風水師のタ・シュウによる、初期の南極探検家たち(アムンセン、スコット、シャクルトン)についての独特な解説は、非常におもしろかった。 以上、全体的に物足りなくはあったが、他に類を見ない個性的な物語であり、読んで良かったと思う。
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