ペギー葉山が『土佐の高知のはりまや橋で坊さんかんざし買うを見た』と歌う「南国土佐を後にして」は民謡「よさこい節」をアレンジしたもの。いわばその望郷の歌をテーマとしたこの映画は、小津安二郎や木下恵介ら文芸調の作風で知られる松竹出身の斉藤武市の手による、マイトガイ小林旭主演の典型的日活アクション・ドラマ。高知への長期ロケが売りのひとつで、刑期を終え出所した小林は早速船でふるさと高知へ渡る。まるでタイかハワイあたりのトロピカルな風光と見まごう土佐の海を美しく切り取るタイトルバックは、いきなりよさこい祭りのシーンに切り替わるのだが、この映画の撮影のため特別に再現されたそれを見に集まった群衆に、当時のスーパー・スター小林旭と浅丘ルリ子の人気のほどが推し量られる。
日活無国籍アクション映画として、銀座の町並みやキャバレー、浜辺での喧嘩や発砲シーンなど定番の背景を巧みにフィーチュァしつつ、抒情派斉藤ならでは、床の間つきの和室、仏壇、南田洋子のお座敷芸なども不自然なく織り込み、今見るものは当時の和洋折衷の風俗に思いを馳せることとなる。
恋人浅丘ルリ子を取り返すために一日だけダイスを振る決心をする小林が、ワンカットでダイス4個を立ててしまうシーンは見もの。ワーキング・タイトルが「ダイスの眼」であったのも頷ける。