古本屋で見かけ、『南仏プロヴァンスの12か月』のようなエッセーかと思って買ったら、実は小説だった。
脱税の片棒担ぎのアルバイト中に、ある学者が残したトリュフの人工栽培に関する資料を入手した主人公は、資料を狙う二つのグループから追われることになる...。南仏の牧歌的な風景の中で繰り広げられる命がけの(しかしコミカルな)冒険という設定は悪くないのだが、日本人はストイックで冷酷な空手使いか無表情な企業人、イタリア人は女たらしのマフィア、アルジェリア人は不法就労者という、どうしようもないステレオタイプは何とかならないものか。雇い主の脅しにびくびくしていた小心者の主人公が突然ゆすり屋に変貌する場面など、ストーリー展開にはご都合主義的な強引さが目立ったし、最後の安直なハッピーエンドももう少しひねりようがあっただろうと思う。
流麗な風景描写や奇抜な登場人物などの見所はあるものの、プロヴァンスシリーズのエッセー並みに楽しめる物語を期待していた身としては、今一つ満足できない内容だった。本来、小説の余りネタで書いたはずのエッセーの方が、はるかに面白いのはなぜだろう。