「南京大虐殺」には、「東京裁判史観」から、無条件に受け入れる立場の人から、「完全なでっち上げ」という立場の人もおり、その中間に様々な見解が展開されている。
今まで読んだ多くの立場の書物は、どちらかというと、特に進歩的文化人系の人と、その対極にある人たちは、「結論先にありき」で、資料の評価とか、証言の信憑性の検証を、自分の都合のいい方に「引用」しているきらいがあった。
秦氏は、この論争に加わるに当たって、まずは第一次資料を重視するという立場を鮮明にし、付随資料の評価は、一次資料と矛盾しないか否かを明確な基準とした上で議論を展開している。
そのため、対極にある論者の双方につき、ある場面では賛成し、ある場面では鋭く批判しているが、その評価基準にぶれはない。
この本は、そういう意味で秦氏の主観が完全に排除されているというわけではないが、客観的であり、公平であり、首尾一貫している。
ただ、このような立場に立つと、両極端の立場の双方から攻撃の対象とされるのであり、大変であろうと心配している。