日本人にとって南アフリカは、今年はサッカーのワールドカップが開催され多少は注目を浴びものの、なじみの少ない国である。地理的に遠く、治安が悪く旅行にも向かない。
しかし南アフリカといえばアパルトヘイトといわれるぐらいに人種差別が有名である。しかしなぜ南アフリカでこれほどの長い間、人種差別が続いたか、それはどのようにしてもたらされ、どのようにその国に根付いていったのか、そして20世紀の終わり近くに、革命でなくは極めて平和裏に行なわれた選挙により、それが撤廃されたのか。答えられる人は殆ど居ないのではないか。
原著は1941年の初版から1978年まで13刷を数えたという南アフリカ史の古典である。今まで世界中で読まれてきた。日本では残念ながら翻訳がないため一部の研究者が読むにとどまっていたが、今回、漸く翻訳されたものが出版され、多くの人が南アフリカでの特殊な、しかし色々な示唆を含む歴史を読むことが出来るようになった。
日本では、中学や高校の世界史、大学の一般教養としての歴史でも、金、ダイヤモンド、人種偏見など、ほんのわずかの事実だけが触れられ、ストーリーが語られることはない国の歴史であるため、取っ付き難いかもしれないが、名文家の著者の生き生きとした描写、判りやすい説明に加えて、簡潔で品のある、翻訳らしからぬ日本語のお陰で、いつの間にか南アフリカの歴史に引き込まれる。さらに読み進めるうちに、このアパルトヘイトが実は人種差別というある意味、単純な問題ではなく、実は資本主義構造の一側面であり、現在我々が直面している資本主義の問題にも繋がり、共通することが見えてくる。
大変意義深い本で、読後に知的興奮を感じさせる。