「卑弥呼の正体」という題であるが、実際には、邪馬台国の位置や、「卑弥呼の正体」については、一切論じていない。「看板に偽りあり」も甚だしい。著者の言いたいことを要約すると:
1)楽浪郡、帯方郡、百済、新羅、高句麗など、朝鮮半島にあったとされる諸郡・諸国家の実際の位置は、中国の史書を注意深く読むと、従来の説よりも、より大陸側にあったのではないかと推測される。
2)「倭」は、朝鮮半島諸国と境を接していたことになっているので、「倭」は朝鮮半島に(も)あった。「倭=日本列島人」、ましてや「倭=大和朝廷」と考えてはならない。
3)帯方郡の位置がはっきりしないので、「魏志倭人伝」にある、帯方郡からの旅程を解析しても、無意味である。帯方郡が、より大陸側にあったとしたら、朝鮮半島のどこかになってしまうのでは?
ということらしい。だが、1)は、北朝鮮と中国との国境問題で、絶えず問題になっていることであるから、一般人でも常識であるし、2)は、古田武彦氏などの、多くの研究者が、とうの昔に指摘していることなので、倭人伝マニアの間では、これまた常識であろう。常識を、あたかも新発見のように書かれても困る。3)は要するに「邪馬台国の位置など判らない」と匙を投げてしまっているだけである。
私見を述べるならば、帯方郡がどこにあったとしても、旅程の途中に対馬、壱岐が登場することがはっきりしているので、朝鮮半島にも倭人がいたとしても、邪馬台国が、日本のどこかにあったことは、確実であろう。帯方郡の位置を問題にすること自体、馬鹿げている。
また、著者の文体は判り難く、地図なども不十分で、何が言いたいのか理解に苦しむ箇所が多々ある。本を書くなら、もう少し読者に親切に書いて欲しいものである。