1〜8巻を総括しての感想です。
これは今は亡き父親の遺伝により心臓に欠陥を抱えるが故に常に死と隣り合わせで生きて来た少女と、健康ではあったが今はもう亡き父親とのわだかまりを残したまま日々を何気なく生きる少年とが出会い、幼いなりの必死で懸命で純粋な愛を育んでゆく物語です(二人は共に母子家庭)。
物語内の文体は筆者特有の『透明感のある文章』と言われる通り、恥じらいも誇張もてらいも無く、ただありのままを述べるもので、それはまるで水がサラサラと流れていく様な清涼さが感じられるものです。その文章により死と言うものがこんなにも恐ろしく、そして穏やかなものなんだと私達にそれを気づかせてくれます。
なんら病気を抱えていたわけではないのに既に亡き少年の父と、確実に後10年で死ぬであろうヒロイン……。この二つの死に明確な差はありません。差があるのだとしたら、いつ死ぬのかを知っているのかいないのか。
自分がいつ死ぬのかをわからないまま、主人公の少年とのわだかまりを残したまま死んだ父親。反面、いつ死ぬのかが判っているが故に日々を楽しく素晴らしく生きようとする少女。
その反比例に気づいた時、私は涙が止まりませんでした。
人はいつか死にます。いつ死ぬのか、それは明確にはわかりません。だからこそ毎日を無為に過ごすのではなく、己の周囲にいる人に少しでも何かを残して上げたい。この物語はそれに尽きます。これは作者の伝えたいメッセージの一つでもあると思えます。
主人公の少年はいずれ死にゆく少女のために、楽しい思い出を作ろうと躍起になり、また、少女もそれに応え、少年との日々を大切に生きます。
例え健康であっても人はある日突然死に、心残りを残すかもしれない。それは病気を抱える人も、健康な人も等しく持つ可能性です。
例え病を抱えている人だって、誰かに何かを残す事は出来ます。健康な人なら尚の事です。
これは人生を大切に生きていこうと学べる本です。
いずれ私にも子どもが出来、その子に物心がついた時、是非読ませたい本であると思います。
日々に疲れ、今現在自分自身という存在に自棄になっている方々、是非この本を読んでみて下さい。
人生に対しての何らかの教訓が、きっと掴める事と思います。私は実際、この本に癒されました。
「今の自分に何が出来るだろう?」なんて弱音を吐けば――恐らくヒロインの少女は目を三角にして「何でもできるじゃないの!」と怒る事でしょうね(苦笑)
これは、真面目に明日から生きて行こうと思える、精神浄化作用のある素晴らしい作品です。
胸を張ってオススメ出来ます。是非御一読を。