子供たちの世界をリアルに描いた小説。
前作、『蒸発父さん』で続いて、これまた作者の実体験を元にした作品で、容赦ない『子供たちの軍隊』による
イジメ攻撃のてん末が実に克明に描かれています。
と言っても教育制度や社会の問題を訴えるワケでなく、また主人公の内的宇宙(インナー・スペース)に酔い
しれることもなく、ただイノセントで良質な少年文学として帰結しているのが見事です。
いじめの発端は、たわいもないひとつの「嘘」。
というより子供たちの世界ではありがちな「ハッタリ」めいたもの。
でも、だからこそ子供の世界は残酷なもの。「嘘つき」というレッテルが付いて回って、やがて泥棒してまで
貢ぎ物をささげるための「奴隷」となり、人間狩りの「獲物」として弄ばれたり、ついには「ヒコクミン」だの
「キチクシン」として扱われるようになる。
こうして主人公「ぼく」の孤独な戦いは続く……。
痛いです。正直これはツライです。
誰もがいじめっ子になれるし、すぐまたいじめられっ子の役が回ってくることだってある。
と言うより、いじめる側だって弱い。弱いから誰かをいじめることで、いじめられなくて済む側に居て安堵しているだけ。
それを自覚している者は、まだ罪悪感を感じているからマシな方だろう。だけど、大概の者はすぐに見えなくなる術を
憶えてしまう。
それでも、大人になった「僕」の視点は決して過去への怨恨憎悪で故郷を見つめているのは無く、探していたひとつの
言葉を辿って廃校となった小学校の場所に帰ってくることに。
なんだろ、近年のクリント・イーストウッドの映画に感動した人だったら共感できる部分も多いと思います。