梨園の御曹司の生活は、おそらく一般的には、なじみが薄いでしょうが、歌舞伎俳優の生活をちょっと覗いてみたい人、歌舞伎に全く興味がない人でも楽しめる一冊だと思います。
「鬼平犯科帳」のシリーズで、著者が人気を博した頃に書き下ろされたものです。
播磨屋とは、中村吉右衛門のことですが、彼の生い立ちから綴られた、実にユニークで機知に富んだエッセイです。
まず、驚いたのは、実兄にあたる松本幸四郎が、戸籍上は甥であり、著者が叔父になっているということ。この複雑な事情は、歌舞伎界では男子をもうけないと、名跡の継承者がいなくなってしまう事が原因なのですが、とても興味深い部分でした。
また、兄の幸四郎は幼少時から優等生タイプで真面目であり、弟である吉右衛門は相当のやんちゃ坊主であったこと。著者にとって、幼少時に面倒をみてくれた、ばあやの存在がとても大きく、肉親を超えた愛情にホロリとさせられました。
著者の日常生活も、とても親しみがわきます。女系家族であり、娘達と妻に囲まれた、男一人の家庭での立ち位置が面白かったです。
TVのチャンネル権やテーブルの座る位置、旅行先での荷物持ちにされてしまう普通のお父さんの姿は、共感を呼ぶと思います。