~おなじみ新藤兼人作品である
乙羽信子と杉浦春子が出演している作品で、新藤兼人作品ではおなじみであり、新藤兼人監督の妻でもある乙羽信子はこの作品が遺作となってしまった。
ちなみに新藤兼人監督は1番目の妻と死別し、2番目の妻と離婚をして乙羽信子と一緒になっている。それでも別居状態を続けていたと言われている。この「午後の遺言状」のシ~~ナリオを書き終えた頃に、主治医から乙羽信子が肝臓癌で余命が1年程度であることを告げられ、本人には知らせぬままに女優乙羽信子の最後を飾る作品として撮り始めたというエピソードが残っている。
その最後の作品と思うと、昔の女優だと思っていた乙羽信子の出演する新藤作品もいつのまにかカラーとなり、時代も大きく変化し、豊かさを増していった時代~~に変わってきた。そして医学の発達と共に高齢化時代を迎えようとしている時に、老人としての一つの生き方の様なものを示してくれた作品だと思ってしまう。
年老いた女優である杉村春子の避暑地での別荘を舞台として描かれたこの作品では、乙羽信子は地元蓼科の農家主婦。そして別荘を管理しながら生計を立てていて、その関係が30年も続いている。そして~~娘がもうじき嫁いでいこうとしている今年、急に杉村春子に対して態度を変えて、自分の娘が亡くなった杉村春子の夫であることを伝える。
その伝え方も、伝えられた方の杉村春子のリアクションもまた、人生を長く生きてきた同士の柔らかさに満ちていて、安心して見ていられる。そういう関係の作り方が、長く生きてきた同士の中にあるのだろうなと思うと、年~~をとることに安心感を持っていられる気がしてくる。
新藤兼人作品で一番はやはり「裸の島」なのだが、この「午後の遺言状」はかなり印象深い作品だ。~