とても繊細で高音の美しいソプラノ・Yuccaのデビュー・アルバムです。クロスオーバー・クラシックというジャンルの音楽を表現しようとしているわけで、声楽曲の堅苦しさを破ろうとした選曲でした。声楽を専攻し、東京混声合唱団でソリストとして活躍していたそうですから、すでにしっかりとした音楽経歴の持ち主ですね。
冒頭の「千の風になって」は、Yuccaの多重コーラスで表現しています。ヴィヴラートの少ない透明な声質ですから、この多重コーラスの企画は成功したと言えるでしょう。多くのアーティストが取り上げている曲ですが、感情過多になっていないところが評価できました。
7曲目の「夜の女王のアリア(復讐の炎に燃えて)~歌劇「魔笛」より(モーツァルト)」は、後に別のヴァージョンでトヨタのCMに使われますから、彼女としても思い入れを持って歌っていると思いました。コロラトゥーラ・ソプラノの代名詞のような難曲です。ここまでテンポを遅くするのは歌い手にとって大変な負担ですね。高音を歌う時に腰や背筋の支えがいる曲ですので、聴いている方がそのあたりを心配しながら聴く、といった感じを受けました。
どちらかと言えば「In My Heart」「花霞み」のようにヴェルカントではなく、地声に近い発声の方が心に響きました。多分元々の声質の良さがストレートに伝わってくるからでしょうか。クラシックの正統な曲は、キャリアと訓練の差が音楽に出てしまいますから結構大変でしょうね。
なお、このアルバムのコンセプトは、リーフレットによると「主人公である女性の『愛と生と死そして再生』を描いたもので、そのストーリーをクラシック+ポピュラー+ヒーリングの歌唱法でYuccaが歌い上げた歌曲集」とのことでした。