この原詩を最初に訳した本、「1000の風」をご存知ですか。
「1000の風」の訳者 南風椎氏は、「グリーン」「ピンク」等の[ザ・ブック・オブ・カラーズ] シリーズの著者。
「1000の風」の厳選された小さな美しい写真、最小限の言葉などは、[ザ・ブック~] にも似ている。訳は無駄のない直球。余計な能書きは一切ないから、読者はそれぞれの思いを馳せることが出来る。大切な人と死に別れた時、これほど支えになってくれる本は、他に知らない。
2003年、同じ詩を訳した「千の風になって」が出版された。
この訳者はさすがに電通の人間だけあって、商売上手だ。朝日新聞「天声人語」で紹介され、関連の単行本、絵本、CD、果ては映画までつくられ、どれも大ヒット。
しかし、私は「1000の風」の方をお勧めする。「千の風になって」は、決してお勧めしない。
「千の風になって」は、まず第一に、無用なリフレインを用いて、ことさら感傷的に訳されている。歌の歌詞にするためにリフレインを使いたかったのか、「感傷的にした方が好い」と思ったのかもしれない。
何にせよ、CDの方も商業主義に辟易しただけで、私には全く聞く価値のないものだった。
しかも、この訳には間違いがある。(おそらく訳者は「意訳だ」と言うのだろう。)
また、1ページの文字数が少なすぎるため、読みづらい。写真を見れば言葉が遅れ、言葉を追えば写真を味わえない。その写真の選択も安易で甘い。
また、翻訳の経過や独自の見解など、詩以外のどうでもいい話で多くのページを割いている。
要するにページ数を増やしたかっただけだとしか思えない。
ネット上では原詩も、両方の訳も読むことが出来るし、できれば図書館などで両方見てみるといい。特に、この本を誰かに贈ろうと思われた方は、ぜひ比べてみることをお勧めする。
原詩が本当に素晴らしいだけに、こう商売っ気を感じると非常に虚しく悲しかった。
結局、「1000の風」の出来が良かったために、もう後から料理しようがなかったのだと思う。