巻頭の「沼の怪」は、この手の話では定番の形なきものの恐怖を描いている。こういう得体のしれないものへの恐怖というのは誰しも持っているもので、根源に訴えるものがあるといえるだろう。
「妖 虫」は、いったいどういう展開になるのだろうと思いながら読みすすめた。そういえば、この怪物を描いた映画もあったなぁ。こういうのを活字で読むとかなりの迫力である。
「アウター砂州に打ちあげられたもの」はイメージが素晴らしい。漁師の口から語られるこの信じがたい話は、そうすることによって神話的な威光さえ感じさせる傑作となっている。
「そ れ」は、怪物の正体が最後までわからない構成になっている。さすがスタージョン、様々な視点で物語を語ることによってサスペンスを盛り上げる手腕はなかなかのものである。
「千の脚を持つ男」も幾人もの人物の証言によって、物語が進められる。読み進めるにつれ
て浮き彫りになっていく怪物の正体。まさしく怪作である。こういう話を真面目に語られると逆に凄味を感じてしまう。
「アパートの住人」はハードボイルドの雰囲気の中で語られる怪異として秀逸。トム・リーミイ「デトワイラー・ボーイ」と同じ感触かな?
「船から落ちた男」は、大海蛇(シー・サーペント)が登場する作品なのだが、当の怪物の扱いが目新しくておもしろかった。なるほど、こういう描き方もあるんだなと感心した。
「獲物を求めて」は吸血鬼物の変異バージョン。非常に短い作品なのだが、印象深い。強烈なイメージにノックアウトされてしまった。
「お人好し」は、怪物ホラーとしては小品な印象を受けるが、物語的にはしっかりオチがついてておもしろかった。途中でオチが読めてしまうが、それもご愛嬌。それしにてもクモとはねぇ。
「スカーレット・レディ」は本書の中で一番長い作品。題材はキング「クリスティーン」と同じである。こういう機械モンスター物は、ラストがお決まりのパターンになってしまうので、それまでの過程が読みどころとなるのだが本作は及第点といったところか。
ということで以上10作、大変読み応えがありました。