本書は、本題にもあるように「みちのく」東北を舞台にしたトラベル・ミステリーが五作収録された短編集である。
どの作品もいろいろな舞台設定になっていて、読んでいるとそれなりに楽しめる。
なかでも、最初に登場する「ゆうづる5号殺人事件」は短編ながら中身が濃く、最後まで分からないトリックが興味を引く。
東京に着いた岡山発の「ひかり」の車内で発見された忘れ物が、後に殺人事件の被害者の持ち物だと判明し、そこから十津川らの捜査が進行していく。その捜査の中、宮城県の阿武隈川で事件に関係のある女性の死体が発見される。が、この二つの事件に絡んでいると見られる男にはアリバイがあり、壁にぶつかってしまう。
この物語は短編にしては登場人物が多く、十津川らの捜査活動も多様で面白いが、最後のトリックが分かってしまうとそれまで読んできた内容が宙に飛んでしまい、重みがない感じを受けてしまう。
他の四編も様々な舞台設定になっていて、作者の多様な作品作りが伺える。
西村作品の短編に興味のある方は是非読んで欲しい。