五篇の短編集だが、それぞれの作品は密度が濃い。
「伊豆下田で消えた友へ」は殺人事件の背後に、ある食品会社が見え隠れする。
それを捜査する十津川警部らの行動は、かなり強引だ。
相手は大きな組織なので、強引に責めなければ、のらりくらりとかわされるだけだ。
この強引な捜査手法に、胸をすくわれる思いで、気持ちが良い。
残りの作品は、列車に関係した謎解きなどだ。
主な舞台は伊豆箱根だ。
この五篇の事件簿はには、鉄道トリックを中心に据えた作品もあれば、
人間の心情に訴える作品もあり、それぞれの作品のベクトルは多方向に向いている。
そういう意味で、作品の質はバラェティに富んでいて、
しかも、それぞれの作品の密度が濃いので、十二分に堪能出来る。