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十字軍物語〈1〉
 
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十字軍物語〈1〉 [単行本]

塩野 七生
5つ星のうち 4.7  レビューをすべて見る (15件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

長くイスラム教徒の支配下にあった聖都イェルサレム。一〇九五年、その奪還をローマ法王率いるカトリック教会が呼びかける。「神がそれを望んでおられる」のスローガンのもとに結集したのはキリスト教国の七人の領主たち。ここに第一次十字軍が成立した。さまざまな思惑を抱えた彼らは、時に対立し、時に協力し合いながら成長し、難事を乗り越えていく。ビザンチン帝国皇帝との確執、小アジア横断、大都市アンティオキアを巡る攻防…。そしてイェルサレムを目指す第一次十字軍の戦いはいかなる結末を見たのか―。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

塩野 七生
1937年7月、東京に生れる。学習院大学文学部哲学科卒業後、63年から68年にかけて、イタリアに遊びつつ学んだ。68年に執筆活動を開始し、「ルネサンスの女たち」を「中央公論」誌に発表。初めての書下ろし長編『チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷』により1970年度毎日出版文化賞を受賞。この年からイタリアに住む。82年、『海の都の物語』によりサントリー学芸賞。83年、菊池寛賞。92年より、ローマ帝国興亡の歴史を描く「ローマ人の物語」にとりくみ、一年に一作のペースで執筆(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

登録情報

  • 単行本: 286ページ
  • 出版社: 新潮社 (2010/09)
  • ISBN-10: 4103096330
  • ISBN-13: 978-4103096337
  • 発売日: 2010/09
  • 商品の寸法: 20.2 x 15.6 x 3 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.7  レビューをすべて見る (15件のカスタマーレビュー)
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58 人中、52人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By ib_pata VINE™ メンバー
形式:単行本
 いやー、今回も面白い。でも、洋モノの十字軍に関する本を読んだらいいじゃない、と言われる方も多いかもしれません。でも、そうした本には、ぼくたち極東に住む人間が欠落している西欧の常識みたいなものに気をかけてくれません。その点、塩野さんの本には、そうした情報を補ってくれる丁寧さと心配りがあります。

 この本だったら、例えば、第一次十字軍で手勢の小兵を率いて大活躍したタンクレディ(Tancred)。塩野さんに、こう書かれるとハッとする方多いんじゃないでしょうか。《歴史上のタンクレディは、若さの象徴と見なされてきた》《二十世紀。ヴィスコンティが監督した映画『山猫』である。あの映画でアラン・ドロンが扮した若さあふれる老公爵の甥を、この映画の原作を書いたシチリアの作家ランペドゥーザは、タンクレディと名づけたのであった。今なおヨーロッパ人は、それもとくに南欧の人々は、タンクレディという名を耳にするだけで、ほとんど自動的に、信義に厚くそれでいて若々しい、永遠の青年を想い起こすのである》(p.278)

 なるほどなぁ、と思ったのは、第一次十字軍というのは、この後に続いたフランスやイングランドの有名な王たちとは違い、日本で言えば、部屋住みの次男三男たちが、領主たちの代理のような形で遠路はるばるドイツやフランスあたりからボスフォラス海峡を渡り、いまのトルコ、シリア、レバノンをほとんどロジスティクスの支援を受けることなく闘いながら進み(逆にビザンチン皇帝からは嫌がらせを受けながら)、イスラム側の油断とマインドコントロールされた虚仮の一念のようなパワーでエルサレムを墜としてしまったという、ちょっとした奇跡のような企てだったんだな、と。オールスター登場となる次巻が待ち遠しい!
このレビューは参考になりましたか?
5 人中、5人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By およよ VINE™ メンバー
形式:単行本|Amazonが確認した購入
ヨーロッパ中世における最大の「事件」の一つとされ,日本でも中学校の歴史で習うので,恐らく名前だけならば誰でも知っている「十字軍」だが,具体的に一体どのような戦争であり,誰が,どのように戦ったかについてはあまり知られていなかったのではないか。過去にも日本語による解説書のようなものは出されていたのだろうが,ようやくここに塩野七生という書き手を得て,特定の立場に左右されずに出来事の実態を描き出すリアリストの筆致をもって,しかも読み物として面白く,十字軍遠征の全体像を一般の日本人も知ることが出来るようになった訳である。

確かにある意味,奇怪な事件である。領土や利権を奪い合う通常の戦争とは違い,「聖都エルサレムをイスラムの手から奪還する」という宗教的な目的が第一である点で,もちろん他の要素も大いにあるとしても,普通ではない。それも国家単位の利害という訳でもなく,ローマ法王の呼びかけがあったとは言え諸侯が謂わば有志で,直接の利害もない初めて会う異民族と戦うのだ。はるばるヨーロッパから大軍を率いて,領土侵略目的でもないらしい,訳のわからない理由で攻撃されたイスラムに取ってみれば良い迷惑だっただろう。

私が強く惹きつけられるものは二つある。一つは「十字軍」という,日本では絶対あり得ない何ともエキゾチックな響きである。キリストを意味する十字の旗を掲げ,鈍い銀色に輝く甲冑で身を固め,馬にまで十字をあしらった防護服を着せた重装騎士団は何とも魅力的だ。もう一つは諸侯たちが一体どんな思いでこの命がけの遠征に参加したか,という動機である。

「十字軍物語」第一部は「カノッサの屈辱」から筆を起こしており,ローマ法王の聖権と王たちの俗権の対立が遠景のように暗示される。ビザンツ帝国の領土的野心と内在する西欧諸国に対する対抗心,ローマ法王の俗権に対する対抗心や権力拡大の欲望,またイタリアの海洋都市の経済的な利益追求など,様々な人たち・国々の思惑が複雑に絡み合う中で十字軍は興された。

諸侯たちにしても,純粋に聖地奪還,聖都解放の思いだけで十字軍に参加した訳ではあるまい。領土や金品財宝の略奪に欲を持つ者もいただろうし,名誉欲や闘争心のようなものもあっただろう。

しかし,本書で活写されたように,十字軍とはまさに小軍で敵地のまっただ中に飛び込む戦いである。ビザンツ帝国も敵か味方か分からず,長く苦難に満ちた行軍を続け,アンティオキアやイェルサレムでの攻城戦を多くの犠牲者を出しながらも敢行するような事は,この世の損得だけ考えれば損という以外にない。そしていよいよイェルサレム攻略という時には,それまで仲違いしていた諸侯たちも力を合わせて助けあうのである。

もちろんリアリスト塩野七生は,聖都奪還の宗教的情熱とか,安易な言葉をかぶせて分かった気にするような事はしない。あくまでも客観的に,考えられるあらゆる条件を等しく評価して全体的に事象を描き出す手法を取る。私も結論を急ぐことはせず,日本人にとっては何とも不思議で魅力的な,十字軍騎士の成功と失敗を交えた活躍の物語を楽しみながら読み進んでゆくことにしたい。
このレビューは参考になりましたか?
4 人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By ともぱぱ 殿堂入りレビュアー トップ50レビュアー VINE™ メンバー
形式:単行本
法王ウルバン二世の聖戦への呼びかけから、イェルサレム王ボードワン一世の死による十字軍第一世代の退場まで、アウェーでの戦い、十字軍国家建設とその基礎固めを、リーダーである諸侯の個性に光を当てて緻密に描く。

大きな物語の原点、及び軍事・外交・政治に反映されるリーダーの人間性に関心を抱く著者の作風に変わりはない。本書の2/3はイェルサレム奪取までの戦記ものとして抜群に面白く、いつもながら地図の出来が見事。

残りで十字軍国家の基礎固めと、第一次十字軍の主要人物が歴史の舞台から去る様を述べる。詳細に十字軍第一世代の各リーダーの美点も欠点もある個性・成長・円熟を知った後では、彼らに別れを告げるのに寂しさを覚える程だ。

十字軍は一神教であるキリスト教対イスラム教の戦争。異教の完全排除=正義の図式がもたらす弊害に触れつつ、多宗教の共存の例を記すことを忘れていない。

宗教戦争と気づかず団結を欠いたイスラム側がどう反撃するか、次巻以降が待ち遠しい。

東ローマ帝国やイタリア海洋国家の内情にもう少し頁を割いてもよかったのではと思うが、それも次巻以降に詳しく述べられるだろう。
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