デイヴィッド・マンロウの代表的な録音です。多くがEMIからの発売となる中、DECCAから出ている数少ないもの。マンロウ独特のはりつめた緊張感と刺激的なドラムが魅力的な、宮廷楽人(吟遊詩人)時代の音楽です。
マルカブリュ、フォン・デア・フォーゲルヴァイデといった代表的な宮廷楽人の作品やその他の舞曲は世俗音楽では残っている記録として最古のものの部類に入ります。その点では音で知るヨーロッパの歴史とも言えます。そこを無難な解釈で演奏しているマンロウですが、彼は中世ルネサンス音楽復興の代表的貢献者でありました。亡くなってから30年が過ぎる今でもこのCDと似たような企画で大きな成功を収めているものはありません。それだけに、この時代の音楽が盛んになった現在でも通用する歴史的録音と言って良いでしょう。
CD時代になってからの再発売はこれで数回目になりますが、まだ認知度が低いようなので少し説明をしましょう。歌詞の内容は、愛をテーマにしたもの、十字軍にまつわるものが中心ですが、カウンターテナーを多用し古い時代の雰囲気をよく出していると思います。楽器も当時あったであろう物を、説得力を持って扱っています。歌曲は伴奏を伴っていますが、流れるような合唱によるもの、リュートを伴いゆったりと渋い旋律を独唱で吟じるものなど、工夫を凝らして多様さをつくり出しています。日本語の解説書は多少不親切なところもありますが(歌詞の原語表記がありません)、このような知られざる作品を聴くにあたっては大変参考になるものとなっています。