この作品のタイトルCROSSFIRE(十字砲火)は戦況において最悪の状況であることを意味する。まさに本作で殺人事件の容疑者となる人物は、物証や本人の記憶の曖昧さにより最悪の状況に陥ってしまう。そして容疑者をめぐって3人の男たち(殺人事件を追う刑事部長(ロバート・ヤング)、容疑者の無実を立証しようとするキーリー軍曹(ロバート・ミッチャム)、ユダヤ人に異常な偏見を持つモンゴメリー軍曹(ロバート・ライアン))の駆け引きスリリングに展開するところがこの作品の魅力。クレジットでは主役はロバート・ヤングになっているが、この作品の本当の主役はロバート・ライアンといっても過言でない。彼の異常なまでのユダヤ人に対する嫌悪を表す演技は観ている者が恐ろしくなるほどのものだった。
人種に対する偏見は刑事部長の祖父がアイルランド出身であるがために殺害された過去を語るシーンにも表れるが、これはアメリカのマイノリティを差別、迫害してきた過去の闇の歴史を表現する部分(アメリカはあまりこの点を表現したがらない)でもあり、この歴史を知らずに観ると何故殺されなければならないのかという部分がわかりにくいかもしれない。
そして、もうひとつの魅力は光と影を自由に扱ったフィルム・ノワール独特の映像。映画が始まってすぐの乱闘シーンはほとんど影と音だけで表されており、むしろそれがリアルに見えた。また、階段の手すりの影やキッチンでコーヒーを入れる男の影等ノワールの雰囲気は十分醸し出されている。
人種の差別、偏見を扱った殺人事件という社会派的ところはエドワード・ドミトリク監督らしい。このような人間の差別を扱ったテーマならノワールでなくてもと思うかもしれないが、かえってその恐ろしさは十分伝わってくる作品だと思う。
DVDとしては画像が悪く、白色で書かれた字幕が白い背景とかぶって観にくい等不満も多いが、作品に免じて目をつむろう。