本書に付いて銘記(覚悟)しておくべきことは、(1)原稿の大部分は、編者である一橋大学教授(伊藤邦雄氏)のゼミに所属する学生による作成であると思われること(本書のはしがき及び謝辞には、本書がゼミ学生との「共同研究」(平成20年-22年)の産物である旨が明記されている)、(2)そもそも伊藤氏の専門は会計学・経営学であり、医療・製薬分野に関しては、全くの門外漢であること(医薬品メーカーに関しては、「日本的経営の問題」を探るためのケーススタディとして、たまたま取り上げられているに過ぎないのだという。これまた本書のはしがきに記されている)、の2点である。
むべなるかな、本書の内容はあらゆる意味において(本当に、あらゆる意味において)「稚拙」の一言に尽き、読み進めるのが極めて苦痛であった。また各章や節によって、担当した学生がバラバラであったとみえ、記述の重複や矛盾はもちろん、なかには著している者自身が理解不十分のままに記述されているとしか思えない部分も散見された。多数掲載されている図表に関しても、無知と不注意に起因すると思われる誤りや不適当が余りに多く見られた。まさに、出来の悪い学生のレポートを読まされているといった気分であった。
出版元が日本経済新聞社であること、同紙の書評欄で好評されていたことから信頼して購入したものであったが、何のことはない、それまで付き合いのある大学教授に安易な出版を促した(少なくとも、許容した)だけだったようである。同新聞社(出版社)には猛省を求めるとともに、いちおう日本では一流に分類されうる大学における現在の教育と学生のレベルがこれほどお粗末なものであるのかと、暗澹たる気分になったことを付け加えておく。
医薬品業界の現状を取り合えず抑えておきたいという読者には、本書に多大な時間(約380ページ)とお金を投ずるよりは、「よくわかる○○業界」的なものの通読するほうが100倍有益であることを断言する(情報の正確性においても、また、勝手な思いつきや思い込みによる誤った解釈がなされていないという意味においても)。